ニューカイロ 都市鉄道 巡検2023 エジプト私利私欲の異常都市

 

訪問: 2023年1月7日

 

ニューカイロシティ建設

 

ニューカイロシティというのをご存じだろうか。

現カイロから50km東にあり、2015年から建設が始まった新首都だ。厳密にはまだ地名は決まっておらず、New Administrative Capital となっている。

New Administrative Capital – Wikipedia

 

権力保持のための私欲の首都 New Cairo Ciry

 

旧カイロ

 

カイロは極度に人口が密集している。カイロの人口は10million (1千万人)だが、カイロ、ギザ、ヘリオポリスを含む大カイロ(Greater Cairo)の人口は20million (2千万人)となる。人口密度は最も高い所で153606人/km^であり、ニューヨーク、ロンドン、さらに上海より高い。

スラム化も著しく、非正規のエリア(Informal Area)にカイロの人口の60%が住んでいる。

 

次に、エジプトはアラブの春のを経験した。人々は2011年に18日にわたってTAHRIR SQUAREというカイロ中心部の広場を占拠した。

ムバラクを倒したのは良いが、その程度でこの失敗国家がどうなることもない。

 

新カイロ

 

権力者からすれば、自分の私権を脅かしかねない暴動はもう発生して欲しくない。そこで考え付いたのがニューカイロシティーだ。

暴動というのは、暴動をするための人間が集まるから発生するもの。カイロは人口密集、スラム化のおかげで暴動を起こすための人間はいくらでもいる。

それならば政府を、人口密集地帯から遠く離れた場所に設置し、そもそもデモをしたくてもすぐには行けないような場所に作ればいい。

 

マトモな人間なら「暴動を起こされないようまっとうな政治をしよう」と思うはずだが、流石エジプトの為政者のレベルは低く「権力は俺様のために使うが、暴動、政権転覆は避けたい」となったわけだ。一体アラブの春とは何だったのか。

 

首都を丸ごと一つ作るのには金がかかるのは幼児でもわかる。wikiには450億ドル(5.5兆円)で政府街、文化街、ビジネス街を作ったと書かれているが要出典となっている。全体の費用は非公表だとのこと。

国防省は「オクタゴン」らしく、とりあえずペンタゴンより数を増やせば強いだろうという発想が幼稚すぎる。

 

こちらのyoutubeが簡潔でおすすめ。

 

大統領

 

そんなアホなプランを思いつくのは一体誰かと思ったが

アブデル ファタ エル シシ (ABDEL FATTAH EL-SISI)という人物で2013年からずっと大統領である。出身は軍人、将軍らしく、いかにもアホなプランを思いつくのは軍人といったところか。

軍人でこのブログ読んでる人どーせ居ないだろうから言うけど、やっぱ軍人は脳筋、自己中、単純、アホである。国を防衛してもらうのは良いが、軍人に政治をやらせてはいけない。

 

ニューカイロシティー 首都鉄道 L.R.T.

 

現在進行形で都市建設が進んでいるが、首都完成より前に、既にニューカイロシティの都市鉄道が走っている!

鉄ヲタとしてはぜひ乗りたいものだ。(急にハイテンション)

ロゴに L.R.Tと書かれておりそれが正式名称なのだが、どう見てもヘビーレールか少なくともメトロシステムである。

公式ページ

 

歴史

 

開業日には「アブデル ファッタ エル シシ大統領と中国大使の遼力強が出席して就任式が行われました。」だそうだ(wikiより)

「2022 年 7 月 3 日に、12 の駅からなる最初の 70 km のルートが開通しました。」 

Cairo Light Rail Transit – Wikipedia

筆者訪問時2023年1月では、2022年7月の当初に開業した12駅が運用中(Knowledge City 駅はなぜか休業していたので厳密には11駅)

 

路線図

 

ニューカイロシティ都市鉄道は、メトロ終点から出発し、現在の所終点は2か所ある。Arts and Culture Center と Industrial Parkだ。

Badr駅で分岐する。

なお、北へ分岐する路線は分岐から2駅のKnowledge Cityまで路線図が書かれているが、筆者訪問時、Industrial Parkまでの運行であった。

 

時刻表

 

2023年1月現在では、各路線30分おきの運行である。よってBadr駅までは15分間隔となる。

 

実際に乗ってみた。

 

筆者はメトロで現場に向かった。起点となるAdly Mansour は、カイロ中心部のAttabaから40分ほどだ。

カイロ メトロ 完全解説 2023 エジプト地下鉄 路線図 車両

 

車両

 

黒、赤、銀の塗装である。6両編成。

 

車輛は中国製だ。

CRRC Corporation Limited

中国国営企業CRRCの青島の工場だ。

2021年製

 

半年前できたばっかりなのでとても奇麗だ。何より客が全然居ないため、汚れることは無い。

筆者乗車時、全車両に6人とかしか乗ってなかった。

 

所要時間

 

  • Art and Culture Center までは57分
  • Industrial Parkまでは36分

 

まず、起点の駅Adly Mansorまでメトロで40分かかるのに、さらに57分もかかり、現カイロから乗り換え含めれば100分以上かかる。

市民の暴動を避けるという目的は十分果たせている。

 

運賃

 

最も長いAdly mansor から Art and Culture Center 20エジプトポンド 100円程度。

100円で57分乗れるからオトクである。

駅区間によっては10、15、20ポンド

 

切符

 

使い切り用

切符は2種類ある。小さな紙きれの一般的な切符のほか、カード型のものだ。

 

リサイクル型

カード型のものは、改札機で毎回回収され、手元に戻ってこない。記念に欲しいなら余分に買う必要がある。

 

撮影禁止

 

ホームは張り紙こそないものの撮影禁止であり、見つかると止められる。

五月蠅い人は”消せ”と言うことがある。超神経質な奴にバレると駅内の警察事務所まで連行される。

 

駅舎の外からの撮影は制限はないと思われるが、駅出入り口では荷物検査がある。その警備員に見られるとイチャモンつけられる可能性が高いので、遠くから撮るのが良いだろう。

 

駅巡り

 

始発駅、終点駅、分岐駅は下車してみた。

 

始発 Adly Mansour

 

メトロ、国鉄線スエズ行き、NewCairoCity都市鉄道(L.R.T)の3線が乗り入れる。鉄道が3種類来るという点においてはエジプトで最も種類が多い。

国鉄スエズ行きは、当駅からは1日2本しか走らないため当駅国鉄の利便性は低い。

 

終点(1) Art and Culture Center

 

Google mapでは A.C.C. と略されている。アート、文化センター駅だ。

駅舎はこんな感じ。

NASSAN ALLAM CONSTRUCTION と左にあるのは建設会社だろう。

 

1階にあるシャンデリアがある空間。鉄道駅に不要と思われるが、この首都自体(ry

駅舎は2階が改札、コンコースである。1階は謎の広い空間にシャンデリアがあり、国家元首のクソデカ写真が飾ってあった。この空間は何に使うんだろう。

ここに居た友好的な作業員の男に、「この街はまだ完成してないねぇ」と言ったら「あと7年かかる」みたいに言っていた。(立ち話なので実際いつまでかかるかは不明)

 

Arts and Culture Centerからさらに延伸するのが分かる。(さらに先はNew Capital Presidential Palace – “新首都大統領宮殿”ができる場所へ延伸する。-地図

21世紀に自分のための宮殿を作ろうとか原始人すぎる。

 

周りには工事関係者以外誰もいないため、治安はべらぼうに良い。なぜ鉄道だけ先行開業したんだろうか。

アート&文化センター駅とは名ばかりで、どうでもいい私利私欲の公共工事に金を使い果たし、この国でアートなど出来るのだろうか。僕はエジプトでアーティストは誰一人見たこと無いが、目の色が濁ったぼったくり観光ガイドと乞食を大量に見た。

 

駅前に名前の由来となる”アート文化センター”があるが、この施設もまだ建設中らしい。中に入ることは出来ず、門の写真も撮るなと言われた(彼は高圧的ではなかった)。

 

分岐駅 Badr

 

当駅ではホームで動画を撮ったら連行された。この鉄道は中国資本のため、僕は中国の関係者と思われていて、Witch company? – どこの会社だ? と聞かれまくり、誤解を解くのが面倒だった。

 

Badr駅舎にはL.R.Tのロゴと、グラサンをかけた国家元首と鉄道の写真が堂々と飾られている。

お前はニューカイロシティを作る前にゴミ収集車を買った方が良いよ(n回目)

当駅、他駅の駅舎内にもこうした国家元首の写真が多い。僕が降りた限り各駅全てにある。

デメリットとしては、客は居ないのに職員だけはゾロゾロ居て写真を撮りづらい。

 

周囲は砂漠で、駅から手軽に砂漠を堪能することが出来るのがこの鉄道の魅力だ。(皮肉ではない(たぶん))

砂漠の何もない所に都市を建設しているから当たり前だが。

 

終点(2) Industrial Park

 

こちらは、Industrial Park 駅。Badr駅から1駅だ。本来は次のKnowledge City まで行くはずなのだが、なぜかここが終点だった。

周りは幹線道路のみがある。鉄道は既に延伸されており、近いうちに開業するだろう。

 

歩道橋は通れるのだが、床のタイルすらまだ貼られていない工事中の状態だ。でも通行していい。テキトーである。

1kmほど離れた所に、自動車整備や自動車パーツのお店など人がいるゾーンがある。コシャリというエジプト料理の店もあるので、食事をとることは出来る。僕は自動車整備で働いていた子供に拉致され、メシを食べた。とても安かった。

今回のガキエジプト人は良い方だった。

 

治安について

 

この辺のニューカイロシティでは人々は職を持っていて、ド田舎のような暇で暴力的なエジプト人は居ないので、安心して歩くことが出来る。

そもそもスラム化、人口過密から政府が逃れることが命題なのだから治安が良くて当たり前だ。

 

まとめ

 

ニューカイロシティー鉄道メリット

 

  • 100円で57分乗れてお得
  • 列車が空いていて独り占め気分を味わえる
  • 治安がとても良い
  • 国家元首の顔を覚えられる

 

デメリット

 

  • 撮影が難しい
  • 警備員がやたら多い
  • 失敗国家

 

おわりに

 

ニューカイロシティの都市鉄道は以上である。

車輛は新しくそこまで魅力的でもないのだが、変な意味で訪れる価値はある。

 

 

新カイロ作る前に今のカイロをなんとかしろ。写真はメトロ駅から徒歩5分。そんな立地の良い場所が既にゴミの山

現カイロの住宅街では凄まじくゴミが散乱し、政府、行政が機能していないのは間違いない。

 

一方でクソデカ都市を計画ではなく実際に作ってしまうのがエジプトの異常さであり、権力者の幼稚さ、国家のレベルの低さである。

日本の民主主義もハリボテで酷いものだが、エジプトそんなチャチなものでは断じてない。

エジプトでは、ハリボテをポータルガンでアナザーディメンションにふっ飛ばして当次元から消滅させたようなものであり、ハリボテすら存在しない。

(単にゴミが回収されてないからだけでなく、1ヶ月いたら本当に酷かったが全部書けないので割愛)

 

今まで56か国行って、汚職など問題を抱えたり、綻びがある国家は多いが、ここまで明確に失敗国家はエジプトが初である。

 

ぜひともこの失敗国家で、ケタケタ笑いながらニューカイロシティを訪れてはいかがか。

ピラミッドよりよっぽど面白いと思う。

 

 

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