どうもNSZ山本です。
2019年5月、改元前後のゴールデンウイーク。
その時とんでもない廃吊り橋跡を見つけてしまった。
場所は静岡県川根本町です。
この辺りの吊り橋では夢の吊り橋が最も有名ですが、
今回する吊り橋は、最も有名でない吊り橋の一つに数えられるでしょう。
閑蔵の吊り橋の場所
場所はこの周辺。静岡県の山奥川根本町。
閑蔵集落付近です。
大井川を渡る新接岨大橋の下にひっそりと隠れています。
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現役の橋/トンネル
廃吊り橋の前に、まずこの周辺に居る構造物と道をの現在を整理しました。
現在の現役の橋とトンネルはこんな感じ。
新接岨大橋
こちらが現在のメインルート新接岨大橋。
県道388号線接阻峡線の一部です。県道388号線は接岨峡温泉から奥泉までの道路です。
あまりのバカでかさのおかげで夕方になると橋の上から橋の形状がわかるくらいに影が出来ます。
旧道:接岨大橋
旧道は落石のせいで車両通行止めになっています。
この先に大井川鉄道の有名な関ノ沢橋梁を望む展望スポットがあります。
通行止めのマークを過ぎ曲がりくねった道を歩くと、接岨大橋が見えます。
このあたりでちょっと山肌を触ってみるとぼろぼろ落ちます。上の写真からも道路があれているのが分かると思います。
そんなことはしない方が良いと思いますがともかくとんでもなく地盤が悪い地域です。
旧道の路面には割と上から落ちた石が転がっています。もう管理する意味もありません。
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接岨大橋。
大橋?
接岨大橋といっても小橋という感じはしないです。特徴もあまりない橋です。
新道が出来る前はこんな細い山奥の道が主要ルートだったんですね。
昭和45年
1970年11月完成
接阻トンネル
接岨トンネルの閑蔵側出口。
竣工1998年。新接岨大橋が出来る2年前に完成しています。
閑蔵から接岨峡温泉まで新道で1.8km。旧道で4.3kmあります。相当なショートカットルートです。現在これらが接岨峡温泉~閑蔵集落付近にある橋とトンネルです。
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これらが今交通で活躍している道たち(旧道はしてないけど。)
実はここにはさらに
もうひとつ橋があった。
今は渡る部分を撤去してしまったけども橋台は森の中にひっそり残っています。
こいつだ。
閑蔵の吊り橋
地図に描くとこんな感じ。
北側
まず北側、右岸側から行きます。
旧道から分岐していく曲がりくねった変な道を降りて行きます。途中で見落としそうですがなんとな~く川に行けそうな分岐があるのです。
そこを降りていくとこんな道になります。獣道レベルです。
この道とも言えない道。
どう考えてもこの先に人工物があるとは思えません。
が、人に見捨てられた橋が待っています。
ほんとにもう何をどう解釈してもこの先に物体があるとは思えませんが奴は突然現れます。
何だお前は
木がど真ん中に、斜めへ生えて突き出ています。
自然に半分帰りかけていますが紛れもなく吊り橋だったものです。
コンクリの高さはかなり低いです。(土から3mくらいか。)この上にさらに鋼鉄製の吊り橋の柱部分があったと推測できます。
吊り橋の場合、歩行面が高く、階段がある場合がありますがこの橋は石垣を使って坂になってます。
石垣と橋台の部分は分かれています。
だいぶ朽ち果てていますが、何かの木材があります。
渡り板にしては太すぎるので、用途は不明です。
今は送電線用の電柱として使われているようです。
送電線があるところを見ると、反対の橋台遺構も送電線の電柱になっている確率が高いのですが、樹木のせいで視認できません。
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一体なんだこれは。
こいつの名は何なのかと思いますが後に明かされます。
南側
南側へ行くために一旦新接岨大橋へ戻ります。高低差がかなりきついです。
新接岨大橋から下を見ると、さっきの送電線があります。
あの電線の右あたりを目指していけば辿り着けるはずです。
南側の入り口はこんな感じ。
ここを降りて行きます。
しばらくすると、舗装路が途切れて、山道になります。
ここでルート選定を誤ると、ほとんど崖のような斜面を降りる必要があります。
黄色い電線のポールが見えます。平らな草の生えた道のように見えますがこれは新接岨大橋の建設用で、新接岨大橋の根元に辿り着きます。
そこから下ろうとするとガチで崖です。この地域の弱い地盤のせいで命がけになります。
正規ルートに行かないと死の危険を覚えます。
正規ルートは上の写真左端の白いガードレールの奥で、目立ちませんがきちんとした登山道です。
正しい登山道を歩いていきます。
登山道をてくてく歩いていくと、奥の方に人工物が見えて来ます。
南側の橋台は、この大木に守られるように佇んでいます。
電線がこちらにも
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吊り橋のすぐ横、
大木の根元になんかぶっ倒れています。
積雪がある地域にある砂を置いておく箱にも見えましたが、ここは舗装路ではありません。
見てみます
スタンプラリーなんてやっていたのか。
見るからにカビだらけで絶対開けたくないですが、何か手掛かりがないか探してみます。
完全にRPGのプレーヤーみたいな行動パターンになっている。
アイテムだ!
懐中電灯のようなものが入っています。
電灯ではありません。
何とスタンプが放置されていました。
読みづらいですが
反転して無理矢理明度をmaxにしたところ
- 閑蔵の吊橋
- 長さ60m
- 高さ15m
とのこと。
重要な手がかりをありがとう!そっ閉じ。結構黴吸いましたが正体が分かってすっきりしました。
この南側の橋台にも朽ちた木とブッ刺さったH鋼があります。対岸と同様、橋の板だった可能性もありますが不明です。
この橋の下の斜面を見ると、ワイヤーがありました。
JISK
この遺構はもう誰の気にも留められることなく、森の中で生き続けています。
数十メートル上には新接岨大橋で、人々の運転する車が行きかっていますが、その中にこの「閑蔵の吊橋」を思い出す人はどれだけいるでしょうか。
人知れず忘れ去られていくのもいいね。
国土地理院地図
地理院の過去の航空写真を見ると、ここには確かに吊り橋があったようです。
1970年
整理番号 CB709Y コース番号 C5 写真番号 14 撮影年月日 1970/10/21(昭45) 撮影地域 静岡
白いシルエットが浮かび上がっています。
1976年
整理番号 CCB7618 コース番号 C8 写真番号 23 撮影年月日 1976/10/07(昭51) 撮影地域 井川
新接岨大橋が出来るずっと以前、1975年頃から2000年までは大井川の北にある県道388号と、左岸にある道(梅地集落へ向かう道)の2つを最短で結ぶルートはこの吊り橋しか無かったのだと推測できます。
吊り橋が無かった場合、接岨峡温泉まで遠回りする羽目になります。まあこのルートの必要性は不明ですが、近所にちょっと行くみたいなことはしていたと思います。
おわりに
今回は見つけたことに関する事実報告で、
この橋がいつ建造されていつ放棄されいつ解体されたのか、調査したわけではないです。
ごめんなさい
短い旅行だったのであわてて次に行っちゃったんですがほんと真面目に調べときゃ良かったな。
たまたま見つけた物件なので報告の意味での投稿でした。
自分は川や海があるとそこに崖と標高差があっても降りて水面に触ってみたいという変な衝動に駆られるのですが、
今回はそれが良い方向に働きました。たまたま見つけただけです。
歴史や経緯を知るためには地元の人に聞いてみたり役場に当たってみるのも良いかもしれない。
本川根町の役場とかが適切だとは思います。(2005年に川根本町が誕生しましたがこれは南の中川根町と本川根町が合併しました。現在の川根本町役場は中川根の方なので、支所のほうが詳しいかもしれない。)あとは県道沿いの山十商店というみやげ屋兼食堂の人とかは詳しいかもしれません。
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正直、この辺りで最も有名で、観光客が殺到し
こっちの閑蔵の吊り橋の方が七兆倍面白いと思います。
時間も無駄にしません。
何はともあれ、森の中にはひっそりとつり橋だった橋台が残っています。
接岨峡温泉に行ったときには、もし機会があったら是非に。
了
取材: 2019/05