訪問日 2022年10月24日〜31日
沿ドニエストル共和国
沿ドニエストル共和国、別名トランスニストリアは、未承認国家で有名だ。場所はモルドバの東側にある。
「第二次世界大戦後、トランスニストリアは重工業化され、1990年には、モルドバの人口の17%しか占めていないにもかかわらず、モルドバのGDPの40%と電力の90%を担っていたほどであった」-wiki とのことで、重工業や発電が盛んなところだった。
プリドニエステル紛争 (Война в Приднестровье)は1992年の5月2日から7月21日に発生した。沿ドニエストル側が勝利した。川の西側であるベンデリを含む地域も占領しているが、川の東側の一部地域はモルドバ政府の占領となっている個所も存在する。
当地政府はトランスニストリアという名前は使ってほしくなく、「プリドニエステル」で呼んで欲しいと思っているらしい。(地元青年談) 英語風に通ぶって”トランスニストリア”というよりも、日本で有名な”沿ドニエストル”と言った方が当地政府が喜ぶだろう。
通貨
旧ソ連未承認国家4兄弟といえば当地の他に、アブハジア、南オセチア、ナゴルノカラバフだが、各国はルーブルやアルメニアドラムの他国通貨(というか親分国家の通貨)を使っているが、沿ドニエストルだけは唯一独自通貨「沿ドニエストルルーブル」を発行し流通してる点が珍しい!
プリドニエステル銀行によると17PMR RUBLE = 約1EUROなので、1PMR RUBLE = 5セント、円にして6~7円程度だ。
通貨は隣国でも両替できるのは一般的だが、沿ドニエステルルーブルは当地の銀行でしか両替できないのでレアである。2014年開始したプラスチックコインは実質お土産用のような立ち位置で市中で見かけることは無い。(そもそも紙幣の最小が6円なので、コペイカが出てくることはほぼ無い) 僕は銀行で土産として購入を勧められた。
Transnistria railway 2022
そんな未承認国家だが、ちゃんと鉄道は通っている。というかソビエト時代から鉄道はあり勝手に独立しただけだけど。
ПЖД というロゴもちゃんとあるのだ!
沿ドニエストル鉄道の公式ページ
そしてホームページもしっかりある!
このサイトには、VL8牽引の客レの写真が使われているが、どこからそんなもん撮ってきたんだろうか。プリドニエステルには電化区間は無いのでウクライナの写真何だろうとは思うが、Vすぎてシャクである。
本社: Tiraspol, ul. Lenina 59b (ティラスポリ レーニンストリート)にある。
他に南支店 ベンデリ Bendery, Akademika Fedorov St. 6
北支店 Rybnitsa, st. ул. Вальченко 12 の支店があるそうだ。
鉄道は中央のティラスポリと北にあるRybnica (ルブニツァ)に分かれている。
公式ページの地図によると北端のCamenca に鉄道があるように書かれているが、航空写真やOpenRailwayMapで見ても一切見当たらないため担当者の勘違いか妄想だろう。
公式ページではさらに南端のDnestrovskから西(Glinaja)へ延びる路線も書かれているが、これも存在しないと思われる。
公式地図をもうちょっとちゃんと書いて欲しい.. 架空鉄道じゃないんだからさ。
歴史
公式ページの「私たちについて (O HAC)」から引用
「2004年8月、 モルドバとプリドネストロヴィア・モルダヴィア共和国との関係が悪化したため 、国営の統一企業「プリドネストロヴィア鉄道」が設立され(ティラスポリ駅、ベンデリー駅、リブニツァ駅)、モルダヴィア鉄道から撤退した。」
旅客列車: 2022年2月25日から運休
かつてはキシナウ〜オデッサの旅客列車があり、沿ドニエストル共和国の首都ティラスポリに停車していた。沿ドニエストル鉄道独自の旅客列車は無く、モルドバ国鉄の車両による運転である。当列車はD1Mによる運転であった。
また、キシナウ-モスクワの長距離夜行列車のティラスポリ経由もあった。
橋爆破、旅客運休
ウクライナが、沿ドニエステル国境の橋を爆破した。March 7, 2022のニュースによると、3月4日に2回の爆破があったと報告されている。
bne IntelliNews – Ukraine blows up bridge to Transnistria after Tiraspol reasserts its independence
ロシア -ウクライナの戦争の影響により、2月25日から運休したとの張り紙がティラスポリ駅に貼られている。
走っていた頃のブログはこちら
2019AUG 夏休み東欧鉄旅Vol.3 モルドバ=キシナウ+沿ドニ観光&国際列車 Bound For Odessa
貨物列車
貨物列車は細々と運行している。上記の通りウクライナから来るメインルートであった国際貨物や国際列車が戦争で走らない。筆者訪問時、ティラスポリ駅のレールは錆が目立っていた。
ベンダー1、ベンダー2駅ではChME3の機関車を撮影出来た。
以下、駅と貨物列車の写真を紹介する。
ティラスポリ駅 Tiraspoli
沿ドニエステル鉄道中心となる駅で本社もある。筆者訪問時、線路は殆ど錆びていた。
首都のティラスポリ駅は一切旅客列車は運転していないが、駅舎内に入ることは出来る。中には観光案内所がある。観光案内所はなんと営業しており、ロシア語であいさつして置いたらオッサンが少し喜んでいた。
駅前はバスターミナルも兼ねている。キシナウからのマルシュルトカ(バス)が発着する。
駅舎内のかつての時刻表には、先述したキシナウ-オデッサや、キシナウ-モスクワも書かれていた。
ティラスポリ駅の向かって左側にはバス用のチケット売り場がある。キシナウへの終バスは19時であったが、変わるかもしれないので各自要確認。
Youtubeにウクライナからの長い編成の貨物列車が走っていた動画がある。
過去の動画: 東京太郎さんの動画を引用いたします。
今は昔だ。
ベンダー1駅
Bender-1
ベンダー駅はあるが、入り口に「入ってもなにもない。列車はない」と英語で威嚇するようなメッセージがある。僕みたいな外人が来て面倒なのだろう。駅舎内には入れない。
貨物はベンダー駅で僅かに走っていた。筆者は単機が南に向かって動いているのを確認した。
鉄道博物館
ベンダー1 駅の横には蒸気機関車と3種類の客車が置いてあり、客車の窓には博物館(Музей)と書かれている。営業時間は8:30-17:00、休みはスレダー(水曜)ヴォスクリセーニ(日曜)と丁寧に書かれている。
頼めばひょっとしたら客車内を開けてくれるかもしれないが、僕の目からすると営業しているとは思えない。保存状態はボロボロだ。
そもそも誰に頼めばいいのか分からない(駅舎に人がいる?)
とりあえずSLの外観だけ撮影した。
ベンダー2駅
ベンダー1の北にベンダー2がある。こちらも、キシナウ〜オデッサの旅客が走っていたが今は来ない。
ここでも貨物が細々と走っているのを確認。
ベンダー1とベンダー2で目撃したChMEは、別の個体であり、何だかんだで複数の機関車は働いている。
おわりに
まとめると、ベンダー側(川の西側)ではЧМЭ3による貨物が細々と走っている。
それだけだ。
かつて2022年以前、沿ドニエストル鉄道は、国際貨物、国際列車がメインであったが、戦争でティラスポリ西方のウクライナ国境の橋が爆破されたために、今は瀕死なのだ。
モルドバ方面は線路が繋がっているが、ティラスポリ側(ウクライナ方面)は貨物に至っては戦争のせいで完全にムリである。
写真を撮るならベンダーのどこかで待っていれば、一応来たが、所詮ЧМЭが貨車3両とかいうレベルなので、被写体として面白いとは思えない。
乗り鉄も出来ないし、正直他に旧ソ連では中央アジアやバルトなど行くところはいくらでもある。
とはいえ一応TEMは走っているし、駅舎は立派なので、沿ドニエストル訪問時は、駅舎などを訪問して欲しい!
沿ドニエストル共和国非常事態宣言(現在解決)
2022年12月下旬には解決したので、心配せずドシドシ渡航して欲しい。
一応この頃こういうことがあったよという備忘録のため
Указ Президента ПМР «О введении чрезвычайного экономического положения на территории ПМР»
21/10/22 12:02のニュースによると、
PMRの大統領令「PMRの領土における非常事態の導入について」
2022年10月末頃、ロシアが沿ドニエストル共和国へのガスパイプラインを封鎖?あるいは供給量をかなり減少させた。
そのため、電気や集中熱システムが十分でなく、非常事態宣言を出した。
筆者は10月に行き、実は非常事態宣言中だったのだが、特に問題はなかった。
Указ Президента ПМР о продлении чрезвычайного экономического положения до 1 декабря 2022 года
01/11/22 14:24のニュース
2022 年 12 月 1 日までの緊急事態の延長に関する PMR の大統領令
11月1日、非常事態宣言が延長され、現地在住の人によると学校は2週間閉鎖、工場も閉鎖、トロリーバスはピーク時間外運休など、いよいよ本当にエネルギーが足りなくなっているそうだ。
電力回復
12/27 2022 のニュースによるとなんか解決したらしい。
モルドヴァ、1月も沿ドニエストルから電力輸入。価格は変わらずの73ドル/MWh>>モルドヴァは電力危機脱出、沿ドニエストルも経済がまわりWin-Winの関係(笑)。ガスプロムは回収できないガスを垂れ流し。https://t.co/9QgCABSGfh
— Shinkichi FUJIMORI (@26Shovkovychna) December 28, 2022
僕が現地人とのチャットしたら 「Energy crisis was solved 」と言っていた。
当面は大丈夫そうなのでドシドシPMRに渡航して欲しい!
未承認国家鉄
他の未承認国家鉄で最も有名なのはアブハジア。