Gyueshevo 週3日の盲腸線/国際未成線【ブルガリア鉄道】

 

乗車日 18.12.2021

 

ブルガリアに唯一、毎日運転しない路線がある。

北マケドニア国境からわずか2kmの駅、Gyueshevo駅だ。

実はこの路線、1910年に開通した110年という長い歴史があるもので、(後述するが)スコピエまで伸びる予定の残骸なのだ。

今回はそこに乗ってきた。

 

週3日しか走らない、国境付近の僻地の路線だとォ!

さぞ風光明媚でエモい車両が走っているに違いない!違いねぇぞォ!

(フラグ)

 

 

場所

 

道路の国境まで3kmなのでマケドニアまで徒歩で行きたい人は行こうと思えば行けるんじゃないでしょうか(安易) 山道で徒歩は大変だろうけど。

 

 

時刻表

 

運転日: 3,6,7 (水,土,日)

週3日しか来ないが、運行する日は2往復走る。

キュスティンディル → ギュエシェボ

7:00 → 8:10

15:40 → 16:50

 

ギュエシェボ → キュスティンディル

8:15 → 9:25

17:00 → 18:10

 

限界集落から買い物に出かける人を午前の上りで乗せて、午後の下りは帰宅列車ということだろう。

 

値段

 

ギュエシェボ → キュスティンディル  34km

片道 2.7Lev (180円ほど)

往復4.9Lev (450円ほど)

 

路線はこんな感じ。

 

 

ソフィアから急行で向かう

 

kyustendilまでは直通の急行があり、今回はそれに乗ってみた

が。

 

БВ6621

お前が優等列車名乗っていいのかよォオオオオオ!!!

ブルガリアにおいて優等列車といえば客車なのだが、ここは(ほぼ全線乗車したのでブルガリア唯一とほぼ断言していい)なんとデジロが使われる。

こんなことってあるのか。ひどい。ひどすぎる。

 

直通とは

 

さらにひどい事にこの”電車”デジロであるが、Radmir以降は非電化のため、Dragichevo駅で”ディーゼル”のデジロに強制乗り換えだ。(Dragichevo駅で乗換え先の左車両は、キュステンディルから来た逆方向の急行6620)

もうむかついたから写真500pxにしちゃうもんね~

 

電車デジロ(右)は3両編成だが、ディーゼルデジロは2両編成のため、3両で元々結構混んでいた列車が2両だと混む。もちろん全員余裕で座れるんだけど、なんかもう急行って感じじゃないんだよなぁ。

Kyustendilまで行く場合、ペトリチ方面の急行に乗り、Radmirで普通列車に乗り換えの方がせめてRadmirまでは客レに乗れるので、乗り換えがある方が良いと思う。そもそも直通列車でも乗り換えあるし。

 

 

Kyustendil

 

文句をたれつつキュスティンディルに到着。駅前には巨大共産銅像が立っていて好感がもてる。

 

街めぐりをしてみた。

 

バザール(Кооперативен пазар)

 

リノックというとわかりやすいだろうか。

ブルガリアではLIDL、Villa、など日本で言えばイオンやヨーカドーみたいな店が充実しているせいで、街のバザールは過疎気味なのだが、キュスティンディルでは案外賑わっていた。

Кооперативен пазар

 

また、当日はクリスマスまで1週間の12月18日ということもあり、中央広場にはクリスマスツリーが建てられ出店がでて市民が集まっていた。

 

 

Roman Baths

 

住宅街にひっそりとある遺跡。通りかかっただけなので写真のみ(説明が見当たらなかった。)

Roman Baths

 

Изложбена зала в джамия Ахмед бей

アハメド ベイ のモスクの展示場、というミュージアムがRoman Bathsの横にある。入場料は3Lev。学生:2Lev

入ってみたが、古代の土器から20世紀初頭の家庭用品(サモワール、すげえ昔のドライヤーなど)が元モスクに展示してある。

展示物的に3Lev払って迄入るほどではないという感想。

 

ローマ時代の風呂の横にオスマン時代にモスクを立てて、それを今はMuseumにしたということだろうか。

 

 

Hisarlaka Fortress

 

こちらの要塞はタダで見放題なので、キュスティンディルで訪れるならこちらがお勧め。山の上にある。

Крепост Хисарлъка

当地の説明の看板によると::

このFortressは4世紀後半から5世紀初頭に建てられた。1つめと2つめのブルガリア帝国のあいだに使用された。15世紀オスマン支配時に取り壊された。

2.12ヘクタールの面積を囲っている。14の見張り塔によって守られている。

 

 

この要塞の北東寄りのあずまやで休んでいたら、スタジアムの近くに住んでいるというお婆さんがやって来て、猫に餌をあげていた。毎日餌をあげに来ているという。

猫と婆さんで和んだところで、鉄道に戻る。

 

 

激エモギュエシェボ線。実際に乗ってみた

 

ついに目玉のさぞエモいに違いない限界国境付近ローカル線、

 

デーーーーーーーーーン

 

……

 

車両ポイント低すぎる。

朝からソフィアからずっとデジロなのにまたデジロですか? 池袋から三厩までE231と701系みたいなもんでしょこれ。

 

乗車人数は、僕、ブルガリア人マニアx2、地元民1、車掌1 以上。

客は4人である。

 

車窓を見ると山深く自然が溢れている。大自然+つまらない車両=水郡線に乗りに来たと思えば車両に関しては我慢できるだろう。

(というかブルガリアデジロは2005~6年導入なので実は車歴15年経ってるんですけどね)

 

途中Kurshalevo駅にて、駅で車を止めて待っていた男に車掌がなにか小荷物を渡していた。列車は何か配達のかわりもしているらしい。

客の地元民は、いつの間にか途中駅で降りて消えていた。

 

 

栄枯盛衰

 

途中のKutugertsiという年間利用客が何人いるんだか分からない駅。にもかかわらずガラスにはмагазин と書いてあり売店が昔あったらしい。

 

1910年開通とだけあって、線路の規格が高速用と真逆であるせいか、列車は34kmの距離をゆっくり走っていく。

キュスティンディルから70分で終点に着く。

 

 

Gyueshevo駅

 

ソフィアから全てデジロで着いた、週3便しか来ない限界終着駅。マケドニアまで残り2km。

デジロに関してはあと5000兆回文句を言いたいが、それはそれとして一体この路線は何ものだろうか。

乗り合わせた地元鉄によると、この路線は当初マケドニアまで作るつもりだったが頓挫し今のように盲腸になったらしい。

 

 

路線の歴史

 

гюешево железопътна とかでググると出ます。

Железопътна линия 6 (България)

Историята на ж.п. линията Радомир – Кюстендил – Гюешево

 

上からの抜粋なので細かい事はリンク先をどうぞ。

 

  • 1873年にトルコによってソフィア~スコピエの建設が開始した。
  • 1874年に資金不足で頓挫した
  • 1909年 7月26日. Radomir – Kyustendil 開通 
  • 1910年 7月16日  . Kyustendil – Gyueshvo 開通
  • 1912年 ブルガリアとトルコの代表と Eastan railway companyの代表が、ギュエシェボからKumanovo(マケドニア)の最後のプロジェクトに関しソフィアで協議した。
  • Balkan war(1912-1913)で中止。

 

 

地元鉄の言ったとおりスコピエまでの路線が出来るはずだったものの残骸だった。1897年から1904年にブルガリア、トルコ間で協議が行われている。1904年の協議によると、ブルガリアが1910年までに国境付近まで完成させ、1912までにトルコが残りを開通するというのを協定草案がつくられたがトルコは批准しなかったらしい。ブルガリアは(トルコの批准が無いのに)その草案を守って1910年に開通したようだ。

 

 

 

ギュエシェボ駅

 

Gyueshevo駅、巨大である。

なんと始発のキュスキンディル駅よりも巨大とのこと。

ギュエシェボ村は現在人口199人だそうでとても釣り合わない。標高は938mで、ナローゲージを除くとブルガリア国内で最高地点の駅だ。

 

Гюешево – Уикипедия

このように巨大なのも歴史の名残だ。マケドニアへの国際列車用の税関、国境審査のため1910年に作られたが、それ以降数十年にわたって使われていない。

巨大な国境審査なりそこねた駅が週3日運行というのは、シチュエーション的には結構エモいと思う。

 

 

駅前通りは閑散としている。

 

150mほど歩くと右に売店らしきものがあるが、折り返し列車が10分なので僕は入店はしなかった。

 

 

廃トンネルの閘門があるらしい

 

(乗り合わせた地元鉄談) マケドニアまで通じるためのトンネルの入り口がこのGyueshevo駅から西へ1kmくらいのところにあるらしい。

僕は折り返し乗車しただけなので見ていないが、僕の代わりにぜひ廃トンネルマニアの方はリベンジしてきて欲しい。お願い!

午前の列車で降りて午後で帰るか、自動車で来れば良いと思われる。

 

 

近年の動き?

 

ДП НКЖИ :: Техническа помощ за подготовка на проект “Модернизация на железопътната линия София-Перник-Радомир-Гюешево-граница с Република Македония”

国営インフラ企業のウェブによると2017~2022年でソフィア-ペルニク-ラドミル-ゲシェボ-マケドニア共和国(=ギュエシェボ)との国境の鉄道路線の近代化というのがあるらしい。

Radmir – Kyustendilの設計速度が75から90km/hに上がる計画と書いてあるが、該当区間を乗っていても全く工事してる気配はないので、計画倒れだろう。

 

 

 

おわりに

 

こんな路線は廃止してしまうのではないかと思ったが、帰りにキュスキンディル駅に居た(乗り合わせた鉄ヲタとは別の)鉄道好きっぽい少年によると、

「村落の人が食料とか医薬品を買うのに必要だから走っている」と言っていた。

 

とはいえ僕が見た限り、僕+地元鉄2名の他に地元民っぽい客は1人しか乗っていなかったし並行道路があり車で移動できるんだから、限界集落のためという動機は薄い気がする。

が、一応スコピエまで伸びる壮大な計画の一部として作られたものだから、国の威信的にも消さない可能性はある。

 

 

 

何にせよ、日本の鉄ヲタはドシドシ殺到してBDZが困るくらい営業係数改善に貢献して頂きたい(雑過ぎ)

おわり!

 

これも読んでみませんか