ウラジオストク。23時。9と3/4番線。あなたは怪しい列車を見たことはないだろうか。
右の客車1両機関車1両の車である。9と3/4番線ではないけど。
乗り潰し#4
セルゲイソ連スキーです。沿海州乗り潰し第4弾。今回はウラジオストクから1本で行けるど田舎、ナヴァチュグエフカを乗りつぶしてみました。
第3弾
ナヴァチュグエフカってどこや
沿海州に路線図。僕も半年前までナヴァチュグエフカなんて存在すら知りませんでしたが、シベリア鉄道本線のシビリツェヴァ駅から東に分岐しています。
ナヴァチュグエフカのナヴァとはNEWという意味です。
最初チュグエフカという街があり、その後チュグエフカの約3km北に鉄道を作った時ナヴァチュグエフカと命名したようです。同行したチュグエフカ出身者はそう語っていました。チュグエフカ村自体には鉄道はありません。
ロシアのНовый УргалやセルビアのNovy Sadはざっくりいうと新所沢です。
時刻表
樺太庁陸地測量部さんのダイヤを参考にしています。本当にありがとうございます。
RZD公式でも見られます。
2日に1本運行
ナヴァチュグエフカというロシアのド田舎に行く列車は毎日運航ではありません。同じ客車をぐるぐる回しているんだと思います。
- ウラジオストク2305→ナヴァチュグエフカ804 奇数日発
- ナヴァチュグエフカ2048→ウラジオストク527 偶数日発
です。
時速32km/h
ロシア国鉄枝線は大抵遅いですが、ここも遅いです。本線から分岐した後、シビリツェヴァからは163kmを4時間52分かけて走ります。平均速度は約33km/h
乗ってみた
エモすぎる単行
2019年8月下旬、ウラジオストク5番線 22時45分。
ハバロフスクやSov Gav、モスクワ方面へ行く長距離夜行列車が全て出発した後。殆どの客は駅から去ってしまった後、怪しいこやつは1両ぽっきりの客車と機関車1機は停まっています。
ナヴァチュグエフカ行の列車です。2日に1回の不便さにもかかわらず、ロシア人の利用者は待っています。ウラジオストクからチュグエフカまではバスが毎日運行、1日3本あります。夜間に移動したいからでしょうかね。
椅子扱いの列車です。しかし普通列車とは言ってもプラツカルテ(あるいはオブシ)と同じ客車を使っていて快適です。シーツと毛布は使えませんが乗っている人数はそう多くはないので、勝手に横になれます。実質オブシです。
ウラジオストク駅で券を買うと券面上は座席指定になっていますが、実質守る必要はないようです。事前に切符を買っている人は少なく、車掌から直接現金で購入する人が殆どでした。
この列車の車掌二人は、なんだかフリーダムな感じです。片方の人は私服で勤務しています。車掌室に一番近い客席は車掌が占有しています。通路方向の寝台の1か所にはなぜか植木鉢が10個くらい並べられ、観葉植物が植えてありました。列車内をベランダみたいに使うんかい。
極東の一番端の、盲腸路線ならではの管理のされなさが最高です。
私が座席に座った後、運がいいことに同じボックスにチュグエフカ出身の若者が座ってきました。彼はウラジオストクの大学、大学というよりもなんだか専門学校みたいな2年の学校だそうでそこに通っているとのこと。少し話してから眠りにつきました。
警官の居ない夜行
この列車はロシア国鉄ユーザーからすると普段と違って珍しいかもしれません。私としてはポイント高いと思います。
長距離列車だと大抵2人の警察官が乗っています。ナヴァチュグエフカ行は普通列車のため警察が乗ってません。短距離列車の場合たまに警備員(охрана)が乗っていることがありますがそれもいません。誰にも一切監視されず快適な就寝が列車です。
車窓
23時発、朝8時着。殆ど闇の中、寝ている間に終わってしまいます。レポートしようにも寝てましたとしか言えません。
終点が近いころは日が昇り車窓を見れるでしょう。
森しかありません。朝あなたを迎えてくれるのは木です。
ナヴァチュグエフカは木材の街です。途中木を積んだ貨物列車とすれ違いました。ロシアの鉄道貨物は盛んです。車内で話したチュグエフカ出身の男によると、中国に輸出する木材だとのことです。昔より操車場にある木の量が減った気がすると言っていました。衰退してるんですかね…
木材の中国への輸出はシベリア全体で行われているようです。
ウスリ川 река уссурий を渡ると、終点ナヴァチュグエフカはもうすぐです。
ナバチュグエフカ
ナヴァチュグエフカ。朝8時。小雨が降っていました。寝ている間に機関車はT3M2に変わっていました。
Т3М2構内入れ替え専用かと思っていましたが、それ以外に使われるんですね。
これにて乗り潰しは終了です。あとは帰りの列車発車時刻の20時48分まで待つだけです。12時間あるぞ。
ナバチュグエフカ駅。
この駅の凄い所は、駅前に何もないことです。少し歩けばマガジンのひとつくらいは有るかもしれません。駅から見える範囲にはありません。
チュグエフカへ行く路線バスも来ません。極めつけにタクシーすら待ち構えていません。
チュグエフカへ移動する
ナヴァチュグエフカで帰りの列車を12時間待つのは困難な修行でしょう。ナヴァチュグエフカは本当に何もありません。銅像もないレベルの村です。
チュグエフカに行けば多少の見るものがあります。
チュグエフカまで行こうとする場合、距離は8kmで歩きは厳しいです。ただ先述した通りバスも無ければタクシーもない。(1km以上歩いて大通りに出ると一応バス停らしき物はありました。どんな頻度で走っているのかは不明。)
バス無しタクシー無しは観光客にとっては困ります。鉄道利用者は身内が町に住んでいるので問題ないのでしょう。私は列車で仲良くなった男が電話したタクシーに便乗しました。何もマークのないただのじいさんが運転している白タクシーに見えました。ロシアはおおらかで良いですね。
こういう場所はその辺の人かたまたま会った人に助けてもらえば大抵何とかなります。
チュグエフカ
チュグエフカにはいくつかの施設があります。
乗り潰しだけでは味気ないので回ってみました。本音を言うと12時間暇だから。
バスターミナル
12時間もこんな場所に居たくない。 I neeed get out of here. な人はバスでとっととウラジオストクに帰ってしまうのも良いかもしれません。
ソ連みのある彫像
いつもの彫像です。
博物館
小さな博物館もあります。
ソ連実のあるポスター
それと右のロシアの博物館にかなりの確率で飾ってある女性のポスター。これは土地を守ろうというもので兵士の勧誘ポスターだそうです。
エモい穀物倉庫
この廃墟みたいなのは穀物倉庫の一部です。
このやばい感じのトラクター、管理人のじいさんに聞いたところ、現役だそう。
やばいです。
ナショナルジオグラフィックみたいな写真が撮れました。
この穀物倉庫を僕は忘れることは無いでしょう。ありがとうじいさん。トイレも貸してくれてありがとう。すさまじいトイレだった。
チケット
最後に、RZDの運賃です。
片道
- ウラジオストク―ナヴァチュグエフカ:680RUR
- ナヴァチュグエフカ―ウシュリスク:460RUR
買い方は
- ウラジオストクの普通列車のチケット売り場で買う
- 飛び乗って車内で直接購入
両方とも可能です。
事前購入の場合、「ウシュリスクの間違いじゃないの」みたいに言われました。まさかナヴァチュグエフカなんてとんでもないド田舎に旅行者が行くのは想定外で有名な街のウシュリスクじゃないかと勘違いされます。「ナヴァチュグエフカダー!!!」とか言えば切符は出ます。
街に辿り着き、チュグエフカ町を見たら僕もそりゃあ切符売り場の女性がそう言うのに納得しました。
おわりに
ウラジオストクから少し足を延ばして、ロシアの小さな田舎町チュグエフカにぜひ行ってみてください。チュグエフカは観光地ではありませんが、本物のロシアらしさ、カントリーサイド感を味わえるでしょう。
列車自体は警官を気にせずのびのびと乗車できます。謎の観葉植物が植えてある1両ぽっきりの単客レで趣があります。
20時20分、ナヴァチュグエフカ駅。ウラジオストク方面へ向かう客たちが集まってきました。
私はこれでウスリースクへ向かいました。
沿海州乗りつぶしシリーズはこの辺で終了です。
- ハサン
- ムィスチュルキン
- ムィス アスタフィエヴァ
- ナヴァチュグエフカ
1から3は終着駅に何かあるわけではなく乗りつぶしだけするにはもってこい。
根室で速攻折返しをすると「ああ納沙布岬に行っておけば良かった。」などと変な罪悪感を覚えます。沿海州の路線は、そういった罪悪感から完全にフリーです。まさに乗りつぶしの為に存在するような路線たちです。
4に関してはどうしても折り返し12時間なので街をぶらぶらしなければなりませんが、自然たっぷりのロシアの木材の街を楽しめると思います。
1のハサンは私からはお勧めしませんが他の路線は乗ってみるのも面白いですよ。
乗車:2019年8月27日~28日
RZD RZhD
Novochuguyevka Новочугуевка Chuguyevka Чугуевка
Vladivostok Владивосток Primorsky Krai Приморский край