訪問 2022年6月~7月
タジキスタン鉄道 完全解説 2022
タジキスタンはソ連の中でも最も僻地にある国といって言い。この国の魅力は健常者向けの東部GBAOという標高4000m級の岩山がありバックパッカーパリピに超おすすめなのだが、鉄道も忘れてはいけない!
タジク鉄道に乗ったレポートや情報が殆ど無く、行くまで走っているのか疑ってたが、実はちゃんと全部走っている。
旅客、貨物、廃線、車両、切符についてすべて紹介する。
タジキスタン鉄道の概要
公式サイトによる
歴史
История железных дорог в Республике Таджикистане
- 最初の鉄道は、1897 年に敷設された Ursatievskaya – Andijan 線でした。国の北部を通過し、ホジェンドとロシア帝国の鉄道(Ursatievskaya?が正確にどこか分からないがウズベクの事と思われる)
- 1907 年に、石炭を輸送するために設計された、将来の Sulukta 線の一部開通(世界的有名食パンナローのこと)
- 1926 年から 1930 年にかけて、Termez-Dushanbe-Yangi-Bazar (Vahdat) 線 (ウズベクから首都へ、現在国際列車も通るルート)
- 1938 年、カニバダム – シュラブ間の支線が共和国北部に敷設。(Kanibadom → Isfara経由、Shurabの路線の事。今はIsfaraまでのみ貨物が走る)
- 1930 年代には狭軌のドゥシャンベ – ニジニ ピャンジ鉄道がタジキスタン南部に敷設され、1950 年にはクルガン – チュベ – クリャブ鉄道が敷設されました。1990 年代に閉鎖され、解体
- 1960 年代と 70 年代には、Termez – Kurgan-Tube – Yavan という新しい路線
- 独立の年に建設されたタジキスタンの最初の鉄道は、1999 年に開通したクルガン – チュベ – クリャブ
- 2009 年 3 月以降、Vahdat-Yavan ラインの建設が開始されました。2016 年 8 月 24 日に特定のラインが稼働しました。
地名だけ書いても全くピンとこないと思うので図解した。
鉄道は今の首都よりホジェンドの方が先に開通たとこのこと。
食パンナローの歴史が古い事は驚きだ。
Vahdat – Yavan の開通時期は2016と新しい。ここ開通前はタジクの鉄道は3分割されていたのだ。
貨物輸送量
30 Апрель 2021 (3か月間のデータ)
(9か月間のデータ)
2021年の貨物輸送量は2つのリンクを合計し、5,376千トン(537万トン)
日本のJR貨物が1箇月で合計217万1000トンだそう(出典)なので、単純に12かけると2604万トンなのでタジクは0.2 →20%→日本の1/5である。
ただし経済規模を考えると鉄道貨物はむしろ日本より活発であるとおもう。
2021年のタジクGDP PER CAPITAが1200USD、日本が大体35000USDなので、経済規模は1/30だが、貨物は1/5の量である。この辺は旧ソ連の鉄道貨物重視だと思う。
旅客はおまけレベル
旅客は97.2+329.5千人 = 426.7千人 = 42万人。
新宿駅の2日の利用者 ≒ タジク鉄道全ての1年の利用者である。
※タジク旅客数出典は貨物輸送量のリンクと同様
路線図
タジキスタンの地形
タジキスタンの人間が居住しやすい所は、大雑把に首都ドウシャンベがある南側と、第二の都市ホジェンドがある北側に分断されている。
南北の間には標高3000mの峠があり、鉄道は無いため、ドゥシャンベ→ホジェンド移動する場合乗合タクシーで突破することになる。
地形の通り、タジキスタンの鉄道は南北に分かれている。ホジェンドとドウシャンベを線路だけで辿るならウズベキスタンを通る。
なおハトロン(旧クルガンチュベ)から南にあるシャフリタウズという街にがある。ここから西へアフガン国境横を通りウズベキスタンのテルメズへ行く線路はあったがウズベクとタジクの喧嘩により2011年以来、ウズベクが遮断した。
こちらも参考: Confluence – Digital Logistics Capacity Assessments
南 ドウシャンベ
- 国際列車 タシケント ドウシャンベ 週1本運行
- 長距離列車 Kulyob行き TE10客レ 週2本運行
- 近郊列車 (プリグラドヌイ) DR1 (DMU) 毎日運行
- 貨物
北 ホジェンド
- 貨物
- プロレタリスク (食パンナロー) 廃止済み
- 旅客列車無し
旅客時刻表
タジキスタン国鉄公式 (2022年7月現在正確)
2022年6月まで、2019年ごろの時刻表が放置されていた。僕が行った6月中旬にいきなり更新しており、現在は正確な時刻表が掲載されている。
放置されていた2019年ごろの時刻表では、ドウシャンベ-カニバダム,ドウシャンベ-モスクワ,ドウシャンベ-クリャーブ,ドウシャンベ-シャフリタウズ,ドウシャンベ-ハフバード が掲載されていた。(僕の記憶では)
国際列車 ドウシャンベ-タシケント No301,302
ドウシャンベ-タシケントは30年ぶりの運行との事。
国際列車自体が30年ぶりというわけではなく、Covid前はモスクワ行は運転されていた。タシケント行が30年ぶりとなる。
週1往復運行
- Душанбе – Ташкент понедельник 18:37発 ドウシャンベ- タシケント 月曜
- Ташкент – Душанбе вторник 16:15発 タシケント- ドウシャンベ 火曜
所要時間 19時間
運賃
- プラツカルト 362.16ソモニ 5000円弱
- クペー 453ソモニ約6340円
運行初日は国旗を掲揚したTE33が華々しく警笛を鳴らしドウシャンベを出発した。
いや、警笛を鳴らすのは線路が乱入し放題で地元民が横断しまくってるからだけど笑
客車
客車はロシアスタイルの普通のもの。ボロソ連客車ではなく、2012年製で便所は圧力式だ。停車中も排便が出来る。ただし国境停車時は鍵を閉める。
客車は冷房ありだが、タジキスタン領内は何故か冷房が稼働せず、ワゴン内35度(客車内のモニターの温度計)と地獄のようだった。
ウズベクに入ると冷房は着いた。またトイレは圧力式なのは良いんだが、トイレットペーパーがソ連圏で売っているパッサパサの灰色の最も安い便所紙で、料金5000円も取ってナメてんのかと言いたくなるが、まぁそこは流石旧ソ連といったところだとろう。
当列車でウズベクへ向けて出国する場合必ずタジク国境軍に賄賂を要求されるので注意
詳しくはこちらの記事で。
国際列車の客は少ない
運賃が高額で、所要時間も無駄にかかるため、客はまばらだった。
比較のためドゥシャンベ~タシケントを最安、最短で陸路で移動するルートは、ホジェンドまで乗り合いタクシー、国境までタクシー、ウズベク内は路線バスとなる。この場合9時間、3500円で行けるので、この列車に乗ることは本当に金と時間の無駄である。
レストラン
国際列車はレストランが付いている。絨毯が敷いてあり、タジキスタンにしては奇麗だと思う。しかしメニューがプロヴのみである。
客は座っているように見えるが、写ってる人はほぼ全員車掌か職員だ。ほぼというか、全員…?
長距離列車クリャーブ行き(No.601,602)
- 602レ Душанбе 8:00 – Куляб среда, суббота ドウシャンベ→クリャーブ 水曜 土曜
- 601レ Куляб 8:20 – Душанбе четверг, воскресенье クリャーブ→ドウシャンベ 木曜 日曜
こちらは地獄だ。
先述した国際列車が、タジク国内で冷房が付かなかったので、その区間は”まるで”地獄だったが、こちらは全区間で非冷房、ボロボロのソ連客車に地元民を満載し、”本物の地獄”である。列車の速度が遅いため窓を開けても風が入りにくいし、一部の窓は壊れて開かない。
基本的にプラツカルトは冬に快適に生き残るために作られているので夏は厳しいのだ。
春や秋や冬に乗る問題ないだろう。
外国人が乗ることは珍しいらしく、無限に地元民に絡まれるので注意が必要だ。
所要時間/距離
- 8時間20分
- 距離 250km
運賃
15ソモニ 202円
2002円の間違いではない。250kmで本当に202円だ。
レストラン(食堂車)
驚くべきことにボロい車両なのにレストランが付いている!レストランは10ソモニと激安のスープだけが売っている。なおレストランも非冷房で、写真の給仕のじいさんも首にタオルをかけ暑そうだ。
白い汁に葉っぱや肉が入ったスープなのだが、この暑い客車で保管されているので、下痢になっても仕方ない。タジキスタンでは何を食べてもどうせ下痢になるので、「これは食べない方が良い」とすら僕からは言えない
鉄道よりマシな移動手段
クリャーブ-ドウシャンベをバスで移動すると4時間、40ソモニ、冷房付きの大型バスが走っているので、こんなどうしようもない列車に乗るべきではない(罵倒)
近郊列車 ハフタバード行き DR1
- 列車番号 6373 Душанбе 17:40– Пахтаабад 19:55 ежедневно
- 列車番号6374 Пахтаабад 4:42 – Душанбе 7:03 ежедневно
毎日運転しておりタジキスタン最も忙しい路線だ。
※2023年7月に行ったゴニマルさんによると土日運休することもあるようです。
運賃
6ソモニ 81円
なお僕は車掌にぼったくられて8ソモニ支払った。
車両: DR1
※2023年ではTE10客レ化
特筆することは無い普通のDR1だ。元エストニアで走っており2016年に譲渡された。
1日1往復しか走らないが、運賃が安いので地元民が大量に乗車する。
2022年冬に行った樺太測量庁の露水さんによると、既に客レだったとのことで、
筆者は2023年5月に客レ化したものを撮影し確認した。。
切符の買い方
- 国内長距離列車 クリャーブ行、DR1の近郊列車 は車内で購入
- 国際夜行列車はドゥシャンベ駅あるいはネットで購入(ウズベキスタン鉄道のアプリ等)
ウズベキスタン国鉄のアプリは、Душанбе のようにキリル文字で入力しないと反応しないバグがあるので注意
タジキスタン国鉄の切符
タジキスタンの切符は、未だにルーブルと書いてあるひょっとしたらソ連からある補充券と、新幹線の模様が付いた切符の2つがある。
そういやタジキスタンの車内補充、日付が19XX年だし金額がルーブルだしソ連から残ってる説がガチである pic.twitter.com/wGSPcGrNvB
— 石器時代 (@NsaYamamoto) July 10, 2022
- ドウシャンベ →クリャーブでは手書き補充券が発券される。(上ツイッター)
- ドウシャンベ→ ハフタバードでは切符は発行されず、車掌に金を払うだけ。
- ドウシャンベ→タシケント 国際列車はソ連チケットを発行。
ドウシャンベ駅のソ連チケットの用紙は「新幹線100系」が書かれている。
旧ソ連圏の鉄道のモチーフはなぜか100系が多く駅のポスターでしばしば見かけるが、切符の台紙になっているのはタジキスタンだけだ。
黒塗り部分のパスポート番号の前に ЗЗ と書かれているのは外国人パスポートの意味なので正しく発見されている。
撮り鉄は可能か
沿線
撮り鉄は、沿線撮影であれば警察を呼ばれることはまず無い。そこまで人員が居ないのと面倒なのだろう。
タジキスタン人は警察に人をチクったりしない温厚な人が多いので安心だ。
撮影地の例は上リンクから。
駅撮り
駅撮りではドウシャンベ駅、イスファラ駅などで禁止だと言われた。
隠れながら撮ると良い。
貨物
ドウシャンベより西
貨物は基本的にTE33Aの運転で、線路近くに宿泊したところ、夜22時や23時に汽笛が聞こえたので、夜は走っているようだ。ただ夜の汽笛はTE33の音だったので、ムキになって撮る価値はないだろう。
日中も来るときはある。これはTEMの貨物。
ドゥシャンベ付近で日中にはTE33Aは見なかった(あくまで筆者旅行中)
ドウシャンベより東
ドウシャンベからクルガンチュベの方は貨物が走っていてもよさそうだが、全然来ない。ごくまれにたった2つ貨車を引いたTE10が来るときがある。
北部ホジェンドで貨物撮影
北のフジャンドでは貨物がまぁまぁやってくる。
ホジェンド駅より西
TE33A-0175
ホジェンド駅より西であれば日中に高確率でやってくる。
筆者は2日行ったが、両日とも14時か15時頃に、ウズベキスタン方面行きの貨物を撮影出来た。
ホジェンドより東
ホジェンドを境に東は貨物が全然来なくなる。
ホジェンドより東は、湖沿いの美しい区間があり、ここを貨物が来たら完全優勝のはずだったが、結局来なかった。
線路に光が見えたので、全く走っていないわけではないと思うが、かなり確率は低いと思う
カニバダム駅
カニバダム駅は貨車はあるものの、入替機はおらず、閑散としていた。
この駅では撮りまくっても怒られなかった。駅員と会った際、「モスクワまで続いている線路、僕は巨大な地球を感じるよ。」みたいに良い事を言っておいたのが功を奏したか?
イスファラ駅
信じられないが、カニバダム-イスファラの区間も貨物が走ってくるらしい。イスファラ駅を見に行ったところ、貨車のゴミを落とす作業をする女性が居た。線路も一応光っていた。
訪問時には入替機すらおらず走行シーンを見ることが出来なかった。
職員もおり、撮影を見つかると制止してくるが、そもそも僕が居るときにTEM2でもいいから走らせてくれよ。実働写真を撮れてないのに撮影を制止されるのはシャクである。(ひどすぎ(どっちが))
ナロー廃線鉄
北部ホジェンドの近く、プロレタリスクには狭軌鉄道があったのだが、2022年に調査したところ廃止になっていた。
プロレタリスクUZD
世界的有名ナローゲージ、プロレタリスクだが、線路も電線も電柱も完全に撤去されていた。
電柱の有った痕跡すら見えず、本当に電化路線であったか疑いたくなるが、ひょっとしたら土に刺さず、ポン置きしただけの架線柱だったのかもしれない(ロシアの鉱山鉄道などにたまにある)
参考サイト
プロレタリスク必見
https://parovoz.com/stories/tj/part2.php
トレピクの丘や、ТЭ10Лの写真
Что нового у железных дорог Таджикистана после распада СССР
ウィキペディア
Железнодорожный транспорт в Таджикистане
大して参考にならないサイト
Железные дороги Таджикистана 8 August 2021
個人的メモ
有名サイトカラヴァニスタンのタジキスタン国境審査のページ。第一項が「詐欺 SCAM」なの面白すぎ。
なお僕も列車で出国する際賄賂要求された
гбао 僕が行かなかったところ。行きたかったが行動ターン数がもうゼロだった