【ギリシア】ペロポネソス狭軌鉄道 -91%が廃止された究極の廃線跡

 

 

 

 

イントロダクション

 

どうもNSZ山本です。ペロポネソス半島をご存知ですか?

ペロポネソス半島はギリシアにある半島です。

アテネから50kmほど東にあります。

 

オリンピア、コリンソス、スパルタ、ミケーネといった世界史で聞いたことがあるような多くの古代遺跡が半島内に有り余るほど点在しています。

 

4000年前、ここは人類の文化、文明の中心地でした。

文明の中心はニューヨーク、パリ、ロンドン、そしてシリコンバレーへ移動してしまいました。そして遺跡だけが残りました。

 

ギリシアは一人当たりGDPは2018年では20000ドル程と西欧と比べて明らかに低いです。

若者の失業率は最も悪い2013年で58%、2017年には回復はしましたが未だ43%です。

 

それでもギリシアは人類の文明が産声を上げた地として、旧大陸では一目置かれた存在です。

経済的には強くなくてもEU加盟時期は1981年の2度目の拡大時で割と早い時期でした。

4000年前のギリシアが無ければローマもフィレンツェもそして現在のロンドンも存在しなかったからです。全てはここから始まりました。

 

ペロポネソス半島狭軌鉄道って何

 

文明の発祥の地ペロポネソス半島。そこにナローゲージの鉄道が走っています。

 

軌間はメーターゲージの1000mmと、750mmの区間があります。

ギリシアではアテネからテッサロニキなどの大陸側主要幹線は標準軌です。

ペロポネソス半島の鉄道はペロポネソスナローブランチと呼ばれています。

 

Piraeus, Athens and Peloponnese Railways – wikipedia

 

現存路線(2019)

 

現在のペロポネソス半島鉄道の路線網がこちら。

半島のいくつかの地域に3つの狭軌路線が点在しています。

 

Diakopto – Kakavrita Railway

北部のDiakopto – Kakavrita は非常に景観が良い路線で有名です。

全長22km、軌道は1067mmより更に狭い750mmの路線です。

開業は1896年。歴史ある路線です。

 

Diakofto–Kalavryta Railway -wikipedia

Οδοντωτός σιδηρόδρομος Διακοπτού – Καλαβρύτων -ギリシア語wikipedia

 

欧州では路線名が特になくて”始発駅名-終着駅名 raillway”というケースがしばしば見られます。

 

Diakopto – Kakavrita は途中にラックレール区間がある山岳路線です。

ダイアキフト – カラブリタ線は1つの記事にできるくらい面白い路線です。以下のページが詳しいです。

 

All Aboard This Magical Train Ride in the Peloponnese – Greece Is

 

 

Pirghos,Olympia付近

Olympia – Katakolo は私が訪問した冬は運転していませんでした。冬が理由なのか日曜日に行ったのが理由なのか謎です。

ピルゴス駅のカフェの人に聞いたらとりあえず走ってはいるらしいです。

バベルの塔に勝てなかったのでそれ以上のことは聞き出せませんでした。

 

Patra 市内線

Agios Andreas – Patra – Agios Vassileiosは都市交通として現存しています。パトラはペロポネソス半島最大の都市で人口は26万人です。

写真の通り多くの人が利用します。

毎時1本運行、運賃は大人1.4Euroです。

 

Προαστιακός Πάτρας – Δρομολόγια – Χάρτης – Patras Info

Patras railway station -wikipedia

 

 

廃止路線

 

廃線跡を含めた路線図がこちら。

 

?!

 

まじかよ。ありえんだろ。ほぼ廃止やんけ。

つぶれすぎだろ。

 

ペロポネソス狭軌鉄道2005:総延長775km

ペロポネソス狭軌鉄道2019:現存68km

 

廃止距離:707km

91.2%の線路が廃止になったことになります。

うそやろ。なんでや。

 

90%ってギャグとしか思えませんがこれは事実です。

2006年から2012年までの時期に順次廃止になりました。

 

半島一周敷かれていた狭軌鉄道。

これがペロポネソス半島ナローゲジドトレインの真の姿だった。

 

ペロポネソス半島は昔は列車に乗れば大体どこでも行けました。

映画紅の豚で有名なザキントス島、そこへ向かうフェリー乗り場があるKillini港も、かつては列車で行けたんです。

全ては変わってしまった。

 

….

 

狭軌鉄道とは言うものの、ローカルな鈍行しか走っていなかったわけではありません。

都市間特急インターシティもこの狭軌鉄道を走っていました。

(お手元にある古いヨーロピアン時刻表を見てみてください。2010年以前なら見る事が出来ると思います。)

 

 

財政難

 

廃止の直接の原因はギリシア国鉄(そしてギリシア国自体の)財政難です。

 

ΔΡΑΣΕΙΣ ΣΤΗΝ ΠΟΡΕΙΑ ΕΞΥΓΙΑΝΣΗΣ ΤΗΣ ΤΡΑΙΝΟΣΕ Α.Ε -Wikiwix’s cache

OSE(ギリシア国鉄)公式ページをアーカイブしたものからの引用です。元記事の発行日は2010年3月23日です。

 

 

「毎年2.3億ユーロの赤字を出しています。結果、2009年終わりまでに7億ユーロになると予想されます。

2010年4月に任命されたOSEのマネジメント(経営陣)は、運輸省の助けを借りて困難な問題に対し取り組みを開始します。」

日本の国鉄末期と似た匂いを放っています。

 

 

法律3891/2010号「OSEとTRANOSEグループ、および他の鉄道部門を再建・強化・発展化」が昨年10月に議会で可決されました。

完全に国鉄再建法ですわ。

 

 

「2011年1月1日から赤字路線である西マケドニア、ペロポネソス半島、国際路線は一時的に停止されます。」

 

 

収益がある路線が導入されました。パトラ市内のAgios Andreas – Patras – Rioです。

反対に、赤字路線は廃止しました。

Amynteo – Kozani(マケドニア地方の路線の事)です。 これらにより利益が15万ユーロ増加します。

 

 

この大粛清でペロポネソス半島にとどまらず多数のギリシア国鉄線が廃止、減便となったようです。

 

ΤΡΑΙΝΟΣΕ: Διακοπή δρομολογίων και αύξηση κομίστρων

(タイトル約:列車が停車し運賃が上がる 2010年9月31日)

こちらのギリシアのニュースサイトには2010年の国鉄立て直し時の廃止リストがあります。

以前にはソフィア、イスタンブール、ブカレストなどへの直通国際列車も走っていました。それらも廃止されました。メテオラへの最寄り駅であるカランパカへ行く路線もこの時休止しましたが、後に復活しました。

 

 

道路最強説

 

直接的な原因はOSE(ギリシア国鉄)の財政難です。

しかし遅かれ早かれ廃止になっていたと推察できます。高速道路が半島内に開通したからです。

 

A8号線のコリンソス-パトラ間は2008年に工事を開始し、2012年に開通しました。 – Highways in Greece -wikipedia

ギリシアの高速道路の法定最高速度は130kmです。

絶対こっち乗るでしょ。アルファロメオでスーパーユーロビートするでしょ。僕でも車にするわ。

 

 

2004年の時刻表によるとIC(特急インターシティ)の所要時間がアテネピレウス港駅からパトラまで4時間4分です。

Athens-Patraの距離は230km。

そこを4時間なので特急列車の平均速度が57km/hでした。

狭軌鉄道は速度が遅くあまり実用的とは言えないでしょう。誰が足のノロい狭軌鉄道に乗るでしょうか。

 

 

おおまかな廃止(休止)時期

 

地元図書館のトーマスクック時刻表バックナンバーから作成。完璧な休止日廃止日は分かりません。

 

2006年初夏

  • 高規格鉄道Athens-Kolinthos 開通 →アテネ直通廃止、Kolinthos乗り換え
  • Athens-Lutraki 一時休止 →バス代行
  • Kolinthos -Arghos-Nafplio,Tripoli 廃止 →バス代行

2007年夏

  • Athens-Lutraki 休止解除
  • Arghos-Nafplio間 代行バス廃止

2007年秋

  • 高規格鉄道Kolinthos-Kiato開通
  • Kolinthos-Kiato 廃止

2010年夏秋

  • 大減便 kiato-patraが9往復→5往復、patra-kalamataが8往復→3往復

2011年冬春

  • Kiato-Patra間廃止 →バス代行
  • Kalo -Kiparissia 区間廃止
  • Patra-Kalamata 減便1日2本のみ

2012年

  • Patra-Kalamata 廃止
  • Athens-Lutraki 廃止
  • 現存3区間を除く全てのが廃止。

 

 

新高規格路線

 

半島内最大の都市”パトラ”までは高規格高速鉄道として新たに敷設されます。これは標準軌で作られています。

地図上の青線の路線です。

 

 

2010年12月、待ちかねたLiosia(アテネ郊外)から Kiatoの路線の電化が完了します。これは空港まで直通します。エネルギーコストやメンテナンス費用のの大きな削減が見込まれます。

-OSEアーカイブ

2018年現在”キアト”までが完成しています。その先はバス代行です。

 

高規格路線はカラマタまで延伸する計画はあるようです。

Alfios – Kyparissia – Kalamataの区間について、事前調査は完了し、最終調査は完了していません。

Patra – Pirgos – Kalamata – ΕΡΓΟΣΕ

Alfiosの地名がどこを指しているのか不明ですが文脈と距離からおそらくパトラ付近と考えられます。

 


日本で言ってみれば、根室線と函館線と石北線と釧網線が全部無くなって北海道新幹線だけ作ったみたいなレベル。

それが現在のペロポネソス半島の鉄道です。

 

 

究極の廃線網跡が我々を待っている。

 

永遠に戻ることのないナローゲージトレイン。悔やんでも戻ってきません。しかし

707kmの鉄路が廃止になったということは707kmの廃線跡があなたを待っているということです。

 

ペロポネソス半島に10日間滞在しいくつかの線路跡か廃駅跡を見てきました。

全部歩鉄して網羅することは私には到底できません。高度な修行を積んだ修行僧でないかぎり無理なので幾つかの主要な都市で廃線跡・廃駅跡・廃車両基地跡を見てきました。

 

訪れた都市の番号は地図上に記してあります。おおむね左回りです。

 

①キアト

 

現在高規格鉄道の終点となっているキアトです。

高速鉄道のキアト駅から北に向かって350m歩くとすぐに廃線跡があります。

 

 

ここは Piraeus – patras railway の途中区間です。狭軌鉄道が走っていました。

 

 

 

半島内でもアテネに近い側(一応都会に近い)なので線路は剥がされていますが、ペロポネソスの奥地に行くとレールが残っていることが多かったです。

 

ペロポネソス半島は”雄大な田舎”です。

土地利用する目的もなく、用地は放置してあります。

 

 

②パトラ

 

パトラ市内の約12kmの区間は区間需要があるために列車の運行が残っています。

 

 

ここは市内線カラマタ側の終着駅 Agios Andreas です。

車両が放置されまくっており、あやしい廃車達を沢山見ることができます。

 

場所はここ。

 

 

中々のぶっこわれっぷり。リクライニング席なのでICで使われていたものでしょうか。

 

 

OSE(ギリシア国鉄)の古いロゴの車がゴロゴロ置いてあります。

スイッチャーですかね。

 

これは車両基地ではなくパトラ中心部の線路用地内に放置されてたものです。かわゆい。

2ΑΚ420という形式だそうで、ドイツのLinke-Hofmannという製造工場で製造されました。

wikipediaに現役時代の写真があります。

 

 

 

③ピルゴス

 

ここはPatras–Kyparissia railway の途中にあるターミナル駅でした。

patraから98.7km、終点のkyparissiaまで残り63.0kmの場所です。

いきなりやべえなおい。

 

めっちゃ自然に溶け込んでる

ディーゼル化後放置されていたものでしょう。

 

ピルゴスはオリンピアまでの路線がまだ動いているので、新しいディーゼルカーが置いてあります。

 

9101系というALCO (アメリカンロコモティブ)という会社が製造した機関車です

List of ALCO diesel locomotives

Hellenic State Railways – Wikipedia

 

ドアがぶっ飛んで右下に落ちてるのが面白いですね。

 

 

現役時代の写真が以下にあります。

A metre gauge adventure in Greece – RailwayWorld.net

 

 

 

④トリポリ

夜の駅。まるで現役の駅舎のよう。

 

ホームにはもちろん誰もいません。

が、電気はついてます…

 

施錠はしてありますが駅舎内にも何故か明かりがついています。

 

ホラー。

 

駅名板にも明かりが…

2007年に廃止して11年が過ぎているはずなのに。

 

駅舎に張り紙がしてあります。

ΚΗΔΕΙΑ とは葬式って意味です。

セレモニーホールにでも転用されたのか…?

 

いずれにしてもホラーだ。

 

 

⑤ナフプリオ

 

ここには枝線の終着駅がありました。

2006年の大廃止直前の時刻表によると1日3往復が走行していたとのこと。

うち2往復はアテネからの直通列車でした。

ここはナフプリオの1つ目の駅です。

1993年までこの駅と路線が使われていました。1993年以降は海側に新駅が移設されました。

 

 

 

 

線路が沢山あったであろう構内跡地の場所は遊園地、レールウェイパークとなって利用しています。

 

Nafplion Railway Park – OSE

 

元ホームには客車が置いてあります。

 

 

 

併用じゃ。

 

併用区間はナフプリオ駅(1)に続く、終点付近の1.3kmほどです。

 

アテネからナフプリオの列車での所要時間は3時間11分でした。今googlemapで検索すると車で1時間41分です。いかにのんびり走っていたことか。

 

草がエモいです。近隣住民の駐車場代わりとして使われています。

 

ナフプリオその2

 

北西300mに離れた、海に近い場所にもう1つのナフプリオのホームがあります。

こちらは1993年以降線路の付け替えで使用開始した新しいナフプリオの駅です。

 

⑥アルゴス

 

旧駅舎が廃墟のまま思いっきり残っています。

 

ギリシア国鉄OSEの旧ロゴ。機関車にも駅にもこのまま残ってます。夜になるとネオンがピカピカするんですかね。

かっこいいです。

 

駅前広場なんですが

 

駅前キオスクは2006年の廃止から12年経過しているのに営業してます。

実際には道路上の商店は国鉄とは関係なくて町のコンビニ的にやっていると思われます。

ギリシアは自動販売機など無いので、こういう道路脇にある小さな店が必要です。

 

ええのう。

 

ボギー車

 

便所だと一目でわかりますよねこれ…

ギリシアでも日本と全く同じオーラを放っているんですが。

 

左がナフプリオへ行く支線、右が本線です。

標識がまるっきり残っていて良いですね。

 

おわりに

 

いかがでしたか。

ペロポネソスと言えばスパルタ、ミケーネ、古代遺跡。

それだけではありません。

ここにはとんでもない規模で廃線跡が残ってます。

 

 

ペロポネソス半島の主要な町にはほぼ確実に廃線と廃駅があります。

だから廃線を無理に目指してペロポネソス半島に行く必要はありません。

ただペロポネソス半島に行きさえすれば良いのです。

 

ペロポネソス半島のどこかの町に行きさえすれば、日本の道路を歩いていたら自動販売機があるみたいに、当たり前のように廃線跡があるのですから。

 

 

 

 

おまけ:

googleやyoutubeで

peloponnesos narrow guaged train

と検索すると色々な動画や写真が出てくるので面白いです。

 

 

ほんとに了

 

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