イランでスマホをパクられたけど汚職警官に賄賂を払ったら戻って来た

 

 

 

「Thank for me」

 

ニタニタしながらその中東顔の、暑苦しい中東顔の警官は言う。

 

俺に礼をしろだと?中々出てくる言葉ではない。その図々しさに腹が立つ。しかし僕が顔に出すわけにはいくまい。

 

「Yes ofcource. Thank you very much.」

 

低身長で扁平顔の、いかにも弱っちそうなキモヲタのアジア人は必死に笑顔を取り繕う。

 

「Is it enough?」

 

警官はニタニタしながらいう。

 

なんだそのニタニタは。

 

ムカつく。

 

目の前には僕のmotolora moto g7 power 5000mahバッテリー搭載 USB-TYPE C 24000円相当が置いてある。壁紙はアメロコの写真で間違いなく僕のものだ。だのに迂闊に手を出すわけにはいかない。

 

僕はその男のニタつく顔を再度見る。ニタニタは多少収まったか。しかし口角は並行ではない。隠し切れないほくそえみがそこにはある。

 

ムカつく。

 

ああ、

 

僕がコマンドーならこの警察署ごと焼き払ってやりてえ

 

僕がメイトリックスならお前の腹に鉄パイプを刺してやったのに。

 

 

 

事の発端:バスでスマホをパクられる。

 

僕が何でこんな理不尽な目に会っているか。それは2週間前に遡る。うかつにも朝のバスに乗っていた。僕はうかつだった。なぜならその日、昨日までならメトロに乗っていたのに「今日は気分を変えるためにメトロでなくBRTに乗ってみよう」と考えたからである。テヘラン滞在5日目だ。たった5日で日常にマンネリ化したOLのように変化を求めたくなるようなロクでもないつまらない見所のない街がこのテヘランだ。いくら首都だからと言ってパリやロンドンやNYCではない。僕はたった5日で飽きたクソ詰まらないテヘランメトロを回避し、何か新しい発見がないかとBRTに求めた。バスごときにそんなものは無いというのに。そしてあるのは修羅への道であるというのに。無邪気な僕は知らなかった。

 

朝9時。バスは満員だ。ドア付近で大勢のイラン人と一緒に立っていた。ふと左手の男が不自然に息を吹きかけてきた。女性の息なた多少気分が良いが髭の濃い顔の濃い中東人の男の口臭である。イランでは男性と女性はバスの乗車が分けられており男女アパルトヘイトが平然と行われている。21世紀も5分の1が過ぎたがこれがイスラムである。つまり女性の息は天地が逆立ちしようと僕にはかからない。中東独特の鶏肉や羊肉の食事と煙草の入り混じった男の息は誰が浴びても気持ち悪いと答えるだろう。僕は顔をそむけた。

 

今考えればそれはおかしかった。いや彼とは限らない。右側に居た老人かもしれない。いい年をこいてロクでもない職業とも言えない畜生以下のカスな自営業の老人だったのか、混雑していて真相は知れない。

 

メトロと交差するバス停で大勢の乗客が降りた。

 

席が空いたので僕は椅子に座った。

 

時計を見よう。

 

無い

 

お前が居ない

 

motolora moto g7 power、お前はどこだ。

 

 

 

2章、バス終点車庫で泣きつく

 

偶然隣に座っていた若いイラン人にとっさに頼む。僕の電話番号にかけてくれと。僕の勘違いでポケットの奥底にあるかもしれない!

若いというよりほぼ中学生のような風貌のそのイラン少年は言う。かけたがどうやら電源が入っていないようだと。

 

僕はホテルに置き忘れたかと思う。否、BRTに乗る前にスマホの時計を見たではないか。だからこそメトロより遅いBRTでも時間に余裕があるから乗ってみようと、そう判断したのではないか。

 

慌てて飛び降りた。まだだ。ポケットを全て探る。

 

ない。

 

ここで判断ミスをしたと思った。ひょっとしてバス内に落としただけかと。すぐに次のバスに飛び乗った。バスの間隔は高頻度だ。

 

幸いナンバーは覚えていた。バスの終点の車庫に着くと猛ダッシュで1本前のバスに突進し不思議がる運転手をよそにドア周辺やさっきの椅子の周辺を探す。しかしない。不思議がる運転手にもまた僕の電話番号にかけてくれと頼むがやはり電源が入っていないという。無くしたというジェスチャーとオーノーと言うジェスチャーをバス運転手にした。僕に出来ることはそれだけだ。

 

僕はバス車両基地を後にした。

 

 

終わった

 

 

僕はこれまでブエノスアイレスでちびっ子強盗にナイフを突きつけられ2000円を強奪されたし、いくつかの国境付近を徘徊して連行など何度かある。それなりにやばい状況は経験済みである。しかしスリだけはされたことが無い自負があった。パリでもメキシコシティでもCiudad del Esteでもスリには会っていない。それも今日までである。

 

さて、どうするか。予定ではこれからQOMに行くつもりだった。2020年1月イラクのバグダッド空港でゼネラルセレモウニ氏が殺害され、怒ったイランはジハードの赤い旗をジャマルカンモスクにオッ立ててアメリカへの復讐を開始しようという所らしく、その赤旗モスクに行くつもりだったが、今や僕の状況はそれどころではない。

ゼネラルセレモウニ氏が死んだ場合はジャマルカンモスクに赤い旗を立てればいいらしいが僕のMotolora moto g7 power が御臨終したときはどこに赤い旗を立てればいいのか?Motoloraの本社か。それとも買収してくれたレノボの本社か。

 

レノボもモトローラも本社ビルが遠そうなので僕はMotoloraのための赤い旗を掲げるのは諦め、安ホステルに戻ることにした。

 

 

3章、Skype で煽れ!

 

盗まれたのは間違いない。しかし僕のスマホは市場価値の無いMotolora moto g7 power である。取柄と言えばバッテリー容量だけでありアメリカの電波法規制のせいでたまにWifiの周波数をキャッチできないポンコツぶりである。

 

第一に窃盗犯はI Phone XRだと期待して盗んだはずなのに今頃がっかりしているはずだ。

同じ6.1インチのデバイスでもI Phone XRと比べると月とガニメテくらい違う。要はmotolora は窃盗犯が欲しい品物ではないのだ。

 

第二に僕はスマホをロックしていない。

PINコード、パターン、パスワード、指紋、いずれの方法でも一切ロックしていない。電源ボタンをポチっと押したら即デスクトップである。犯人は僕の個人情報、メール、LINE、メルカリ、Whats App、Telegram、画像フォルダ、pixivからダウンロードした絵、インスタグラム、すべて見放題なわけだ。

 

試しにホステルで手元のPCからgoogle devie managerでデバイス探しても位置は特定できないようだ。やはり中学生やバスの運転手は正しく電源は切られているらしい。

 

だが万一犯人がネットに接続する可能性もある。そしてロックをしていないという事は、犯人は僕の受け取る通知を見ることができるわけだから利用しない手は無い。

PCからでもスマホからでも同様にアクセスできるツールと言えばSkypeである。僕は親しい友人にPC版Skypeで以下のように依頼した。

 

 

اگر تلفن هوشمند من را برگردانید ، 100 دلار به شما می دهد

اگر تلفن هوشمند من را برگردانید ، 100 دلار به شما می دهم. من در تهران هستم

↑これコピペして僕に再送して

 

 

てめぇスマホ返してくれたら100ドルやる

という意味のペルシア語でありgoogle翻訳で即席で作った。しかし右から左とはコピペ時の挙動がおかしくなるし非常にはた迷惑な言語である。言語自体迷惑なのだからスリなどで迷惑をかけないでほしい。ともかくSkypeの通知で相手にこれが行くはずだ。これが通じたらワンチャンスマホが返ってくるかもしれない。

 

 

4章、私と小鳥と新スマホと汚職警官と鈴と

 

とはいえもうどうせ2度と戻ってこないスマホだ。Skype戦略は所詮悪あがきであんなものには期待していない。太平洋に落とした安全ピンにおーい戻ってきてくれーと磁石をかざしているみたいなものである。しかも安全ピンはサメに食われてしまったみたいなものである。

翌日からレンタカーで鉄道撮影なのでgooglemap が使えないと困る。そんなわけで大慌てで本日中に新しいスマホを購入しSIMカードをゲットした。あとでわかる事だが、

スマホを取り戻すにもスマホが必要だから新しいスマホを買っておくのは良い判断だったことになる。13500円程度の低スペックでろくでもないビギナー向けスマホだったが役には立った。

 

 

 

スマホを購入しホステルに戻るといきなりこんなメールが来ていた。

 

「Police fond the thief they need you to go and get your stuff from them」

警察が盗人を見つけたよ – 数日前に泊っていたホテルの支配により

 

は?

 

速すぎである。現在17時。事件発生からまだ8時間しかたっていない。とりあえず返信すると、どうやらその警察から前回宿泊していたホテルに僕への問い合わせがあり、宿泊時にメールアドレスを書いたからメールで来たらしい。自分の電話番号を返信し、スマホを盗まれたのはまさしく吾輩であると文を打った。

 

 

しばらくすると電話がかかってきた。

 

TLLLLLLLLLLL

 

「ハロー ハウアウユー」

 

「Սね」

 

僕はハローハウアウユーが宇宙で2番目に嫌いである。

 

1番は貧乏ゆすりをするヤツ。僕がポルポトならその足を二度と動かせぬように全員土に埋める。

2番目はハローハウアウユー。僕が毛沢東ならその口から言葉を発せぬように餓死させる。

3番目は電車でガムを噛んでるババア。僕がナチスならガムが噛みたくなくなるようにガス室に送る。

 

 

 

そんなわけでいきなりՍねと思ったが、警官はいきなりなんとこういった。

 

「電話代がもったいないからお前がもう俺に一度かけろ」

 

なんだって?

 

ここから類推できることがある。

①僕の1つ前の滞在ホテルを探り当てているので、警察か警察相当の権力であることは確かだろう。

②電話代をケチるということは警察の回線を使わず自前の電話でコンタクトを取っている。

 

この2つから分かることは何か?

 

賄賂を求める汚職警官である

 

キタコレ熱い展開になってきたぞ!

 

後出しじゃんけんで予測してたふりでなく実際僕は彼の電話番号の名前を「汚職警官 おしょけ」として登録していた。

おしょけってのは僕にも分からない。

 

 

彼の言い分によると

①直接私のオフィス(警察署)に来られてもすぐ渡せない。

最寄りの警察に行き、被害届を出して黄色い紙をもらい、それを持参するように。

 

とのこと。それがイラン警察の手続きだとのことだ。僕は鋼の錬金術師を思い出していた。

 

「電話口の相手を燃やす錬金術が使えればいいのに」

 

僕はロイマスタングの気持ちが分かった。

 

誰だか知らんがその汚職警官を今この瞬間この僕が丸焼きにできないことをひどく残念に思った。

 

 

 

5章、役立たずのクズ組織イラン警察

 

気にくわないが汚職警官の言葉に従って被害届を出さねばならない。翌日早起きし近くの警察署へ向かった。

 

イラン警察に行っても物事はすぐには始まらない。なぜならイスラム文化は産業革命も宗教革命も経験していないから非効率的な人情や人脈が大切にされ、長々としたどうでもいいくだらないカスのような挨拶で前置きをするからだ。挨拶を大事にすると言えば聞こえがいいが時間を単に無駄にする馬鹿共である。さて警察署につき必死に被害届を発行するよう説得しても相手は悠長なものだ。

20分ほどでようやく英語がまともにできる男が調書を作り始めた。彼は若く、悪い奴ではなさそうだ。個人単位では彼はかなり好感が持てたが、ここで軟化するわけにはいかない。彼も所詮、汚職組織ペルシャ警察の一味である。悪い組織に入ってるんだから人間の質も知れたものだ。

彼は調書を作り始める。汚職警官から連絡があったことは言わないようにしただ盗まれて困っている哀れなアジア人を演じることにする。くだらないアラブ人(ペルシャ人とわかっているがあえて間違えてアラブ人と表記する。なぜなら日本と韓国と中国を判断できないのと同じように彼らの尊厳踏みにじってやりたいからだ。カス共。)に演技するのも毛頭疲れる。

 

調書を作り終わる。

 

昨日汚職警官が言っていた黄色い紙がもらえるかと思いきや予定とは異なる言葉が僕の聴覚器官に働きかけた。

 

「これは調査用紙である。これから我々が本被害について調査する。調査には3から5日かかる。結果は追って電話する。」

 

は?

 

役立たずのアラビアクズ警察共が。感じが良い若い警官というのは撤回せねばならない。組織のツッパリ棒。でくの坊である。せいぜいつまらない市民の取り締まりで一生を終えるがいい。

 

つまり僕のスマートフォンは今日汚職警官から取り戻せないわけだ。

 

僕がジャックバウアーならこの場で被害届を得るためにこのくだらないアラブ警官共をCTUに連行して拷問にかけてやるのに

 

クソおおおおおおおおおおおお

 

 

6章、諦めて悟りの境地へ→砂漠で撮影

 

僕は考えを改めることとした。慌てても仕方ないではないか。昨日新たなスマホは購入済みである。今日中にMotolora moto g7 powerを手に入れられないとしたら、それは天命である。日本式の天命であり断じてアッラーの意思ではない。僕の脳内でオリンポス12神とアッラーとイエスキリストと古き者とスティーブジョブズその他を戦わせたら一番強いのはジョブズで、アッラーはトーナメント戦16強にも入らず敗退しスポンサーも付かず選手生命後もトレーナーにもなれず神界コンビニで深夜バイトだ。

 

 

つまり天命なので、ぼくは諦めてこのイランを楽しむことにした。

 

そうして僕はイランの撮影をした。

 

いくらイランの人民にうんざりしたとはいえ、鉄道に罪は無く、大地に罪は無く、砂漠に罪は無かった。

 

見渡す限りのフィールド。

 

素晴らしかった。

 

石積みのアーチ橋

 

美しかった。

 

これほどの鉄道素材があるのにその立地から隠れていたイラン鉄道

 

壮大さを僕は噛みしめていた

 

そう、その時までは。

 

 

TLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLL

 

着信アリ

 

 

ワイ「Սね」

 

 

 

つづく。

 

 

 

 

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