無免許で動力車を即運転体験 魚梁瀬森林鉄道 高知県

 

 

 

俺はなんで動力車のハンドルを握っている

 

 

 

日本一簡単に運転できる動力車

 

 

鉄道の運転体験といえば碓氷峠や陸別が有名だ。そこでは何万円も払ったりそもそもいきなり運転させてくれない七面倒くさい講習があったりする。あるいは自転車みたいなのもある。ペダルを漕ぐ人力だと神岡で乗った事が有る。

今日紹介する魚梁瀬森林鉄道はエンジン付きの動力車(実際には法律上動力車じゃないのでタイトルは釣り)にもかかわらず、面倒で時間のかかる講習は一切不要。費用は千円と安価。ベンチャー企業のwebアプリもびっくりの手軽さである。

 

たった1000円でいきなりエンジン付きの乗り物を運転できる。

繰り返すが客車に客として乗るのではなく運転できるのである。

 

 

魚梁瀬森林鉄道の保存会

 

魚梁瀬森林鉄道は、中芸地区森林鉄道を保存・活用する会という会によって運営されている。

公式ページ

魚梁瀬森林鉄道遺産Webミュージアム”

魚梁瀬森林鉄道 – Wikipedia

 

 

場所は山深い魚梁瀬。自治体では馬路村だが馬路村の中心からさらに奥まっている。

四国の飛び出た室戸岬の丁度真ん中らへんに位置し、平地である沿岸部から最高に行きづらい場所だ。高知空港からグーグルマップでは車で73km、1h45minと出るが実際には2時間では到着できないし、とても73kmしか距離が無いとは思えない疲労がたまるドライブだ。国道1号の静岡らへんをぶっ飛ばすのとは真逆だ。

 

 

 

 

魚梁瀬森林鉄道 路線・歴史

 

路線:

魚梁瀬森林鉄道遺産Webミュージアム 奈半利川線

魚梁瀬森林鉄道遺産Webミュージアム 安田川線

 

奈半利川は奈半利駅の近くに河口があり魚梁瀬ダムへと続いている。そこに並行して奈半利川線が走っていた。

安田川は奈半利川の北西にありほぼ並行し、安田駅の近くで太平洋にそそぐ川だ。

 

 

以下抜粋

・1895年(明治28年)、最も古い魚梁瀬和田山 – 宝蔵山にいたる12.4kmの牛馬道を開設。

それから数々の路線が開通。1942年(昭和17年)、栃谷口 – 釈迦ヶ生間完成。これにより全線開通

 

・1958年、長山 – 二股間撤去開始。

線路を撤去し道路化したトンネルもあるよう。

最終的に1963年に廃止、1964年に一部利用されていた線路も廃止された。

 

開通は明治時代であり相当歴史が古いが、廃止されたのも1964年と50年以上前とかなり早く消滅している。新幹線が出来たころにはもうお陀仏。日本のуждは短い命だったのね。

上の歴史は抜粋なので細かいことはWikipediaで

 

 

歴史をすごく分かり易くまとめると、「道路が完成しちゃった場合のアプシェロンスク・ナローゲージレイルウェイ」

ということになるだろう(ならんだろ)。

ロシア 限界狭軌鉄道 アプシェロンスクナロー 2019

 

 

実際に行ってみた

 

とまれ、魚梁瀬に向かう事にする。

魚梁瀬森林鉄道の廃線跡は結構残っており、歩道のための橋として残っていたり、トンネルも再利用されていたりする。

魚梁瀬ダムの方向へ向かっている途中、一本道なので確実に遺構のどれかは目にするだろう。

 

 

 

オオムカエ隧道

ガチで廃線巡りしたい人はこれらも一緒に巡ると面白いと思う。

 

高知市内で借りたEKワゴンはしょぼいエンジンサウンドを山間部に轟かせながら魚梁瀬への上り坂をひた走る。スピードは出ないので強制安全運転だ。道が狭いし曲がりくねってるからまあいいか。どうでもいいけどダイハツの車は120kmくらいしか出ないけど三菱の軽ってメーター140まで出る事が有る(要出典)ので、さすがランエボを作った会社だ。(関係ないだろ)

 

到着

魚梁瀬森林鉄道の保存鉄道の駅。「森の駅やなせ」

駅の建物は目新しい。

 

 

 

営業日

 

駅舎の中を覗いてみる。駅舎といっても客が入れるエリアは吹き曝しだ。トイレはウォシュレット付きの綺麗なトイレがある。

切符売り場の横に看板がある。

 

運行日は毎日曜日、国民の祝日および8月の毎土曜日となっている。

私の訪問時は平日だったのでまあ運転してないな… と思った矢先

 

運行日以外に乗車希望の方は 森林保養センター「やなせの湯」にご連絡ください。との記述。つまり平日に行っても乗れる可能性がある。

ただし感染症騒ぎのせいもありそもそも「やなせの湯」が営業していないというバグ (2020.07時点)があるので注意されたし。病原菌騒動のせいで確実な事は僕からは言えないのでご了承ください。

 

 

交渉

 

そんなわけで周囲をうろついていると、車庫の近くの駅とは別の平屋の建物内にすわっているおじいさんを発見。УЖДマニアの責任として一度乗って見ねばなるまい。

おじいさんに話しかけてみる。

 

「これっていつ営業しているんですか?」

日曜に運転体験をやっている。」

ワイは話しかけるために既に知っている情報を聞くタイプである。無駄だと思うがやめられない(どうでもいい)

 

「そうですか。ではまた今度」

「13時から燃料を入れるからその時動かすので、今日できん事もない」

 

 

できんこともないのかよ!

特に粘って交渉とかではなくすんなり乗せてくれた。ラッキーだ。

 

 

現在12時。13時まで待たなければならない。しかしこの魚梁瀬まで来るのには高知空港からわき目も降らずコンビニにも立ち寄らずレンタカーで突っ走っても2時間はかかる。そもそも高知に来ることは今後一生ないかもしれない。僕の中ではロシアに入国した回数と四国に入国した回数だとロシアの方が多いので四国は近くて遠い国である。

どうせこっちは遊びで来てるんだし、今日の予定は変更して構うまい。ロット式機関車に乗りたいんだよ。

 

 

おじいさんは一旦昼飯を食べに自宅へ戻っていたが保存鉄道の車庫へ軽トラでまた戻ってきた。

 

 

車両

 

よくわからない式(左) と野村式(右)

2020年現在車庫の中には3両の機関車がある。おじいさんによると全て動くとのこと。

魚梁瀬森林鉄道遺産Webミュージアム【動態保存・復元】

 

  • 野村式L69号→茶色い奴
  • 谷村式機関車→ 水色のこれから走る奴
  • よくわからない式→車庫の奥にあるツートン

 

 

エモい沿線

 

車庫の中から谷村式を発進するおじいさん。

機関車は復元なので古めかしい見た目ではない。客車も同様に当時の現物を使ってるわけではないから積み木のおもちゃみたいな見た目だ。

当時の実際はもっと険しい場所を走っていただろうが、しかし新緑(7月なので新緑か不明)のなかを走るナロー機関車は雰囲気はある。機関車をもっとヤレさせれば良いかもしれない。保存鉄道としてはそりゃ駄目だけど。

 

谷村式はロット式でSLみたいに車輪同士が棒でつながっている。

私はロット式で実際に動いているのはソフィアの入れ替え機でしか見たことが無い。自らの手で運転できるのはここだけだろう。

 

製造年は平成3年7月とのこと。

 

 

 

 

実際に1000円で運転してしまった

 

森の駅で1000円を払う。エンジン付きの乗り物の運転体験としては破格の安さである。

というかこの時点ではたった1000円で運転体験が出来ると半信半疑だったためまあ乗車するだけでもいいかな?と思っていた。

 

 

 

 

運転できた。

 

 

事前講習は一切ないので、すべてがぶっつけ本番である。

手順はあるスイッチをONにしてから次にキーを回す。キーでエンジンが始動する。

 

 

クカカ  ブヴヴヴヴヴヴヴ(ディーゼルなので低め)(動画は撮っていなかったので全部ディーゼルサウンドをオノマトペでお送りします。)

 

次にブレーキを解除。

そして前進にレバーを倒し徐々に最大まで倒していく。

 

 

ヴ↑ヴ↑ヴ↑ヴ↑ヴ↑ヴ↑(低い速度で客車4両を牽引する機関車の音)

 

さらにエンジン回転の調整のつまみを回す。

 

オ”オ””オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ””オ↑↑ (エンジンの回転数が上がった音)

「やべえやべえやべえ」

 

 

たまにおじいさんが指示を出してくれるがエンジン音がかなりうるさいせいであまり聞こえない。雰囲気を読んで指示を理解するしかない。

警笛を鳴らせとのジェスチャーだったので、踏切の手前では警笛を鳴らす。

 

ピーーーーーー

 

運転中の自撮りは安全上問題があるのでおやめください。客にチクられます()

 

 

 

 

(数分後)

 

園内を2周し終了。一般的な鉄道のマスコンブレーキの配置ではないがこれはこれで楽しかった。ところで運転体験のおじいさんはかつて本当に鉄道員をやっていた人というよりもどちらかというと元学校の先生みたいな見た目だった。しかし運転が楽しすぎて「元鉄道員だったんすか」と聞くことすらも忘れてしまった。

 

 

おみやげ

 

運転体験では券を買うがこの木の板が券である。木材が有り余っているという事なのだろうか。14cm x 11cm x 厚さ1cmもある。

裏に日付の判子が押してあるのでしばらく記念に置いておこうと思う。あるいはテーブルに熱い鍋を置く際これを鍋敷きとして置くと有効活用できるかもしれない。

 

 

かつての写真

 

体験運転を終え、駅舎内の写真を見学する。

先述した通り保存鉄道の客車は目新しい色合いの木製で別に渋いという事もない。しかし展示された過去の写真を見ると形状は間違っておらずそこそこ忠実に復元したようだ。

 

過去の写真の中には「魚梁瀬地区には映画館が2件あった」などと今の過疎ぶりからは全く想像できない文言もあった。マジすか。政治家が地方創生というが魚梁瀬に再度2件の映画館を建設するのは無理だろう。何をどう想像しても現在の姿から信じられない。

 

 

栄光

 

昭和11年頃から、村役場が正式に乗車券を発券しましたが、あくまで、木材の輸送がメインであったため、「運行中万一如何なる災害が生じても補償は致しません」という心得が駅に掲げられていました。

魚梁瀬森林鉄道遺産Webミュージアム【ディーゼル機関車】

 

こういう森林鉄道では定番の文言だったのだろうか。どっか別の所でも聞いた事が有る。現在は只の保存鉄道・体験列車なので貨車に乗って落下して死ぬことはない。

 

 

 

廃線跡

 

先述したように隧道や橋梁が結構残っている。僕は全てを巡ったわけではないが歴史の項の通り路線網は長くあったのでそこらへんでトンネルや橋梁を見つけることが出来るこれらをじっくり回るのも面白いかもしれない。

 

明神口橋という橋。レッドトラスが生かしている。

 

 

 

 

おわりに

 

車庫へ帰る列車。こうしてみると森の中で雰囲気はある。

 

 

全国に保存鉄道は多くある。僕が行った中では神岡と美幸線はチャリに乗るだけだったし、他の保存鉄道でも普通に乗客として乗るのが普通だ(石川の尾小屋とか)。

当時の本物の動力車でなくあくまで復元なので素人にいきなり運転させるなんていう芸当が出来るのかしら。単に高知県の山奥すぎてほとんど人が来ないのが可能にさせるのか、謎である。googlemapのレビュー数あ執筆現在22件(★4.1)でそう多くの人は訪れない。

 

 

序盤で道路が出来ちゃった場合のアプシェロンスクと例えたが、日本はいくら腐っても道路を作る国力があるんだなあと思うと同時に、僕が動力車のハンドルを握れたのもある意味廃止してしまったお陰というのもありますわね。

 

 

運転体験といっていきなり動力車を自らの手で走らせるのは日本国内ではめったにないだろう。自分の行う操作でレールの上を進んでいくのだから。1000円払ったらその場で走らせるいきなりOJT魚梁瀬。

 

高知に行くのです。

 

 

訪問 2017.7.21

 

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