まずはこちらの画像をご覧頂きたい。
打ち棄てられた自動販売機の遺体。鉄屑に見える。
通行人からは忘れ去られてしまうようなさり気ない道端の鉄箱に過ぎない。だがお前が今日の主人公だ。
新聞の自動販売機はたまに田舎の駅に行くと置いてある。だがバス停の横で見るのは珍しい気がする。
ところで他にもレトロな自動販売機といえば、うどんの自動販売機がある。ドライブインにあるやつだ。
うどん自販機はどこにある?設置場所や気になるメニュー、値段をご紹介! | 暮らし〜の
西ひかりが丘団地
この日はたまたま近くにある横浜上白根郵便局に用事があって団地に立ち寄った。
件の遺体のように見える新聞自動販売機は、神奈川県の西ひかりが丘団地にある。相鉄線鶴ヶ峰駅からバスで行ける。
URのサイトによると西ひかりが丘団地は築49年はあるらしく、けっこう古い。
団地は特徴的な形状だ。元々エレベーターが無かったのだろう。後付けで設置したようだ。各階段が独立して部屋に行く設計で、1棟あたり4本エレベーターを設置するという大変コスパの悪い状態になっている。建設当時1970年頃は日本はエレベーターなんて高級品だったということなのか。高齢化によってエレベーターの設置に迫られた時、担当者は過去の設計がなんと愚かだったことか悔いたに違いない。
団地は団地としてバス停を降りた直後である。
バス待合から降りてすぐ、ボロい物好きや廃墟系のもの好き人間のこころをくすぐるアイテムが目に入る。興味が無ければ気付きもせず通り過ぎてしまうさり気なさだ。
近くで見ると。
~NEWSPAPERS~
大文字で誇らしげに新聞を主張するが、その色は褪せてしまった。
上に目を移す。
綺麗な新聞が入ってね?
十数年前から放置された新聞が中に残っているとしたら紙面はもっと黄ばんでいるはずだ。3段ともきっちり上からスポーツ紙、普通の毎日新聞、経済新聞が入ってるし、紙質や文字の大きさを見る限り最近の新聞が入っている。近寄ると日付をみれば今日の物だと分かる。2020.10.11
新聞落ち目時代、ネットニュースで済ませてしまう昨今の若者の新聞離れ、こんなどうでもいいバス停(失礼)横にある新聞自販機に需要があるとも思えない。こんなさびれた団地(失礼)に新聞を販売所の職員がわざわざ補充しても、買う客が居るのだろうか?
買う者が居なければ廃止になるのが世の常だ。
だが何かがおかしい。
コイン投入口の上の絵をよく見る。
使用硬貨 100円玉の絵
(3つあるうち下の2つは文字が薄れて相当見づらかった。)
奇妙だ。
毎日新聞のコンビニやキヨスクでの値段は2020年現在150円。だがこの新聞販売機のコイン投入口は100円玉専用とある。
釣銭返却口のようなプラスチックのフタは見えるが、ここから親切に50円玉が出てくるような機構が、果たして備わっているのだろうか?
自動販売機本体のボロ過ぎる見た目が既におかしい。コイン投入口が現行の販売価格に適していない。これは遺体である可能性を物語っている。
だがどう見ても今日の新聞が入っている。これは生存の可能性を示唆している。
そこにあるのは矛盾。
遠目で見てみると鉄屑にしか見えない。
ボロすぎて3段目の透明の窓はガムテープでくっつけてあるだけだ。
そもそも機械が故障してる可能性もあるし、サポセンの電話番号が書いてあるわけでもないから故障していた場合100円は戻ってこないだろう。
否。
僕はここで引き下がっていいのだろうか。
いそいそとバスに乗り、疑問を疑問のまま解決しない人生でいいのか。僕はケツをまくって逃げる負け犬のままでいいのか?謎との闘いに。
この新聞自動販売機は僕の探求心、疑問に対する向き合い方を試しているのでは。
俺に100円玉を食わせて見ろよ?なあ人間。
100円玉を入れろと。
ならばよかろう。
受けて立つ。
コインを入れただけでは何も起こらない。
横にレバーがあるので下げてみる。
デーーーーーン
出るんかーーい。
結論
100円で出ます。
50円お得に購入可能。33%Offセール毎日実施中。何年前の値段なんだこれ。
生きていた。お前は。
風雨に打たれン十年生きてきた。幾多の通行人を見守ってきた。西ひかりが丘団地の歴史よ。
例え客が減ろうとも、俺はここに居るんだぜ?
THIS IS THE HISTORY.
神奈川県横浜市西ひかりが丘団地に行ったときは新聞を買おう。
そういや新聞の自販機で新聞を買ったの初めてだった。
おわり。