イラン国鉄 夜行列車 2020 part2

 

イラン夜行列車&近郊列車乗り鉄の第二段。Part1を書いてPart2を書かない派のわいだが今回は書いた。

 

 

前回:

イラン鉄道 夜行列車 2020 part1

 

今回は4,5,6

イラン南西部を走る近郊列車 Mahshar – Ahvaz と、マシュハド→バンダレアバス バンダレアバス→テヘランの夜行列車を紹介する。

イランは鉄道以外にも見る所は多い。チョガザンビルの遺跡を訪れた。

 

路線図は以下の公式を基に制作。

NETWORK OF IRANIAN RAILWAYS

 

区間/キロ/所要時間/金額

  • 4. Mahshar – Ahvaz 100km 1時間40分 30円
  • 5. MASHAD – BANDAR ABBAS 1500km 22時間 1400円
  • 6. BANDAR ABBAS – TEHRAN 1483 km 22時間25分 ?円

 

時刻表は公式をどうぞ。いっぱい夜行があってダイヤ見てるだけでもわくわくするわね。

TIMETABLES BY ROUTES

 

 

Mahshar – Ahvaz 

 

前回は長距離乗り合いタクシーでMahsharに到着した。

ここから4の近郊列車に乗車する。1月6日乗車。

 

Mahshar の近郊列車は1日4往復も運転しており便利だ。今回乗車するのは15:35発 列車番号905

百合子もびっくりな二階建て客車3両。Mahshar駅のホームは最近出来たかのように見える綺麗さだ。

イランは駅撮影は緩いので怒られることは概ね無いがマシャール駅は特にゆるい。この列車もIran Runner (シーメンス製)牽引で目新しさはないが、近郊列車がDMUではなく客レなのはイランで初めて見たので撮影する。

一眼を持っているキタイスキーを見て喜んだ少年が、僕を撮影して!と繰り返しやって来た。少年は元気すぎてパパが困っていた。

 

少年の後には車掌も話しかけてきて、車掌の写真を撮った。アフバーズ-マシャール線で一眼を持ったアジア人が来るのは珍しいのだろう。

 

 

客車内。全体的に空いているので迷わず2階に座る。強い西日を避けるためにカーテンがある。景色を見たいので進行方向右側に座った。椅子横にゴミ箱があって便利だ。

 

先程の車掌がやってきた。切符を売りにきたのかと思ったら「タダで良いよ」のこと。折角の親切だが、僕は切符を買ってみたかった。どんな券か知りたかったのとコレクション的に欲しかったからだ。

 

「ぜひ買わせてくれ!!!買いたいんだ!!!」

 

強いひと押しで切符を購入。

 

30000リヤル。約30円。未来を思わせるモノレールみたいな絵が書いてある。

 

列車は北に向かって砂漠を走って行き、たまに灌漑用のため池が見える。

100kmと短い乗車なのですぐ到着する。1時間40分

 

アフバーズ駅に到着。街の東にある’Ahvaz, Mahshahr railway station’に到着する。テヘラン直通の列車が発着する本駅とは別だ。

 

アフバーズにある2つの駅のうち、テヘラン方面へ行ける主要幹線の駅はこれ。

 

 

 

アフバーズ市とHyundaiの電車 

 

前回、Khorramshahに着いたとき空気が汚いと感じたが、アフバーズはそれを数段上回る。ガチで喉にイガイガと違和感を感じる大気汚染を実感できる都市だ。幸い僕はとっとと死にたいし大気汚染で寿命が縮むことには賛成なので問題ない。

 

景色は心なしか土気色のフィルターをかけたように見える(気がする)(メキシカンフィルター的なアレ)

アフバーズ市は緯度が台湾と同じくらいなので1月でも暖かい。

 

アフバーズはKarun Riverの両側に都市が形成する。その川にBlack Bridgeという鉄道橋がある。川沿いを散歩していたら撮り鉄するつもりは無かったけど偶然DMUが通りかかった。

このDMUは形式名がよくわからない。

Hyundai製で公式サイトにはIran IRICO DMUとあり2004年に作られ2011年に配送された車両とのこと。

IRICOというのは「Iranian Rail Industries Development Co(イラン鉄道産業発展会社)」で、形式名でなくイランの会社の名前だ。IRICOのサイトによるとEram Railbusと書いてあるので エラム電車ということに(勝手に)しておく。

 

Hyundai, Eramでんしゃはテヘラン近郊でも走っていて撮り鉄したときに捕獲している。

アフバーズは他にこれといってやることも無かったので空港でMDを見たり喉をイガイガさせる大気を深呼吸で吸い込んだりして時間を潰した。

 

 

Susa -遺跡

 

世界的有名古代都市Susaと世界的巨大墓石遺跡チョガザンビルに行ってきた。AhvazからSusaはバスで行ける。

Susaは広い平原に建物の基礎みたいなのがある遺跡だ。ペロポネソス半島に行ったときを思い出す。一般的観光客にふさわしく歴史的教養がないのに過去に思いをはせる事が出来るミーハーなワイ。

冬なので観光シーズンではないからか人はまばらだった。Susa遺跡には博物館も併設している。入場料は外国人価格は5倍位高いやつだ。

 

チョガザンビル

イラン式ピラミッドチョガザンビル。Susaから20km程度南東に位置し公共交通は皆無なのでタクシーで行くしかない。ケチな僕は諦めようというアイデアも一瞬浮かんだ。冷静に今考えるとここまできてタクシー代ケチるのは愚かすぎる。

クソデカ1眼を首から堂々とぶら下げSusa市内を練り歩いていたら、運よくアジア人に興味を持った青年が車を止めた。その青年2人がチョガザンビルまで乗せてくれてついでに案内もしてくれた。帰りに青年はガソスタに寄り、ガソリン代を請求してきたが、30円/Lだった。しかも最近は高いと不満を言っていた。まじかよ。

 

クソデカ1眼をぶら下げて歩くことは旅行では危険とする説もあるがラッキーエピソードになることもある。Susa遺跡は以前書いたので細かいことはこれをどうぞ。

【イラン世界遺産】チョガザンビール スーサ遺跡 エラム ササン朝

 

Susaとチョガザンビル遺跡を見終わりもう用は済んだので、チョガザンビルの最寄り駅Susa Train Stationからテヘランへ戻った。3と同じルートなので省略する。

 

 

Imam Reza Shrine (でけえモスク)

 

5のバンダレアバス行き夜行列車に乗る前にマシュハドの世界的有名観光地を訪れることにした。

なおマシュハドまではMDに乗れると期待してテヘランから飛行機に乗り、見事にA320で激萎えした。切符買うとき空港で散々確認したけど、職員は機種なんて真に受けてなかったんだろう。というかめんどくせーなくらいにしか思われて無かった気がする。

 

マシュハドは世界で最も巨大なモスク – Imam Reza Shrine がある。シーア派の人はここも巡礼に含まれる。12イマームのうち第八代イマーム・ムーサ―・リダーの墓もこの中にある。

Imam Reza Shrine – Wikipedia

 

ここでは外国人専用のガイドがおり完全に無料で中を案内してくれる。出入り口で少し待たされた後、英語がスーパー堪能で博識な30代くらいのモスク関係者がやってきて僕を案内してくれた。

 

 

 

 

はじめは有料の解説ツアーかと思い、いくらかかるの?と聞いてしまったが全てムスリムの寄付によって成り立っており費用は不要だ。広い敷地に礼拝所、博物館など様々な建物があり巡っていける。全体的にタマネギ型の物が多い。

細かいことは忘れたけど、ここには国家最高指導者が来る日もあるらしい。

 

外国人向けに解説ビデオを視聴する場所もあってシーア派について学ぶことができ、まるで視察に訪れた要人のように手厚くもてなされる。

モスクとイスラム世界を説明するフルカラーの冊子をくれる。なんと日本語版もある。僕は礼拝は5回だと思っていたがシーア派は3回だよと知らされ、あらためて蒙昧無知さを思い知った。

 

 

 

なぜ日本人は労働を崇拝しているのか

 

彼は日本について造詣が深く、「日本人は良く働くよね」(よく働くことはコーラン的には良い事なので、ムスリムからも好意的に思われているらしい。)などと雑談をした。彼は「過労死」を知っているほど日本通を発揮していて、なんでそんなに詳しいん?とツッコみたくなるレベルだった。

 

そして僕に最も影響を与えた言葉の一つを残した。

 

 

「なぜ日本人は労働を崇拝しているのか」

 

 

神の言葉ではないかと思うほどだ。流石神に仕える職なだけある。僕は蒙昧無知の闇を彷徨っているので答えに窮し気の利いた回答は言えなかった。

 

我々は渦中にいるので健常者は疑問に思っていないが冷静に考えたらヤバい崇拝だ。汝サビ残をする者に祝福が訪れるだろう  有休を消化する者は火に焼かれるだろうとか一体どんなカルト宗教だよ。

ムスリムによる日本人への洞察の深さに恐れおののきモスクを後にする。

 

 

乗り遅れた。

 

モスクをエンジョイしすぎて乗り遅れた。

イランは結構定時で出ます。時計を読めない中年男性、倒れ伏す。

 

 

5.MASHAD – BANDAR ABBAS

 

翌日。1月27日。

出発後の払い戻しは不可で、再度購入だが、1400円と安いので被害は少ない。

12:10発 880列車。1500 km

到着は翌日10時なので22時間と今回最も長い乗車時間だ。

 

ペルシャ絨毯がイランらしさを出すコンパ。

今回のコンパは前回乗った2,3と比べると一番シンプルというか何か庶民的で自宅みたいな雰囲気がある。2,3ではテレビ画面があったが今回は無い。下段の椅子はベンチ式で、間にテーブルが無い簡素なものだ。寝るときは背もたれを倒し背もたれの裏側がベッドにある。

コンパのドアの上に荷物置き場があって廊下の天井の上がその荷物置き場の空間になる一般的な構造だが、そこに枕など就寝グッズが入った袋が4つ置いてある。

 

暖房設備は(この列車に限らないが)奥の銀色の吹き出し口から容赦なく熱風が出てくるので、コンパの扉を閉めると暑苦しい。

 

冬のイラン北部

マシュハドを出て1時間くらいの途中駅で雪が振り出した。無邪気な子供は喜んで雪を固めて投げつけていた。

というか子供も大人も関係ない。左に居る運転士は今雪を握っていて、右の同僚に投げつけていた。

 

 

ダイナミック方向転換

イラン長距離列車の見どころは入れ替えない方向転換だ。Dizbad では東から来て南へ向かうが、一々機関車を切り離したりするケチな事はしない。

入替なんてするのは小学生までだよねーと言わんばかりにループで方向転換できる大陸クオリティ。大陸先生流石っす。

 

 

運転席乗車(フィクションです)

 

イラン国鉄的にもあんま良くは無いんだろうけど(というのも夜にこっそりしれっと行われた)、運転手の好意で運転席に招待された。電車の運転席は客室とつながっているから招待は割とよくあるが、営業中の機関車は滅多にない事だ(僕の人生ではtg15に次ぎ2回目)

昨日モスクを観光しすぎ乗り遅れたお蔭でこの運転手の時に乗れたわけだから、こうして因果を感じるのも旅行の楽しみのひとつ。

 

ホームはちゃんと嵩はあっても運転台のドアは案外高い位置にある。

まず目を引いたのはひまわりの種だ。運転しながらつまみ食いするために置いてある。イラン人も食うんかい! ロシアでは一般的によく食っているので親近感を覚えた。

最近の車両(2010~)なのでコンソールは全体的にデジタルでハイテクっぽかった。

一番気になるのは中央にある赤い起爆スイッチみたいなやつで、あまりにも核ボタンっぽいから押してみたくなる。まあ列車ミサイルはどちらかと言うとTHE NORTH KOREAの得意とする技なので、たぶん非常停止とかなんだろう。

アナログメーターでスピードがあるのに左のモニターにも映像でスピードメーターがあるのは謎だ。でんぐるまひろしじゃないので細かい事は分からないけど電Dで見たブラックアーバンライナ―と同じワンハンドルマスコンということだけは分かった。

 

運転士は2人ペアで交代で運転する。客車にはその2名用のコンパがありそこにも招待された。おっさんとワッツアップを交換した。

帰国後もたまに通話が掛かってきて、僕が社畜生活で疲弊した顔でビデオ通話に出ると「お前はイランに来るんだからそれまでに疲れきるな」と温かい言葉をかけてくれる。(なぜか確定事項)

 

 

バンダレアバス

 

1500km乗ってバンダレアバスに到着。駅撮りキッズしようとしたら何故かバンダーアバスでは迷彩服を来た(軍人かは不明)男がやたら高圧的に写真を撮るなとか、高圧的どころか怒っていたので先頭車は撮れなかった。しゃーなし。

バンダレアバスはイラン南部にある。ペルシャ湾の入口が超狭くなっている所にあり、対岸は尖ったオマーンがあるとこと言えば分かり易いだろう。

 

バンダレアバスえき

駅舎はイランの地方駅の中でも大きい方だ。まるで空港みたいだ。開発中なのか土とかコンクリ製の歩道との境目になりそうなものが並んでいる。

 

マシュハドでは雪が降っていたのに1500kmも移動したので気候が一転し暖かい。そしてアフバーズなどのイラン南西部と違い空気が汚染されていない。

海岸では家族連れが砂浜に絨毯を敷いてそこでチャーイを飲んでくつろいでいた。南国なだけあってQOLが高い。僕は浜辺でネットサーフィンしたり家族からチャーイをもらったりした。

 

 

イランの離島

 

バンダレアバスはペルシア湾に浮かぶいくつかの島の玄関口だ。

僕はホルムズ島、ケシム島、ヘンガム島の3つを訪れた。

ホルムズ島 イラン 2020

ホルムズ島は本土とは違う取り残された雰囲気があり、道路は未舗装で、娯楽がない住人が道端で水煙草をふかしててヤバい感じがする観光に最適な島だ。(別に水煙草キめてても襲ってくるわけじゃないので全然大丈夫です)

海が高波になると普通に船が出なくなるのもアピールポイントだ。

 

イラン ケシム島 安宿

ケシム島はヘンガムと対照的で文明度は高い。というかバンダレアバス以上に発達している。そしてUAEナンバーの車が普通に走っている。港の建物の壁にはTAX FREE ZONEと書いてある。

ここはイランでは特殊な島で、180カ国の市民はビザ不要で入国できる解放された島だ。UAEから飛行機で来るのが一番楽だろう。他のイラン諸都市を訪れたいなら通常通りビザが必要だ。

 

 

 

6.BANDAR ABBAS – TEHRAN

 

今回のイラン旅行で最後の夜行列車。1月27日に乗車。

17時発で翌15:25に着いたので22時間25分。1483 km。値段忘れた。

イランランナーは見飽きたが乗るのはこれで最後だ。

 

この時既に1月下旬、Covidが丁度始まったころでやべえなめんどくせーなと思っていたが、離島で野宿した無理を引きずり、こんな悪い時期に発熱するという惨事が起きていた。まるでコヴィッドキタイスキーではないか。

この列車に乗ってるとき既に体調がわるかったので乗った記憶があんまない(やばい)。

 

Tips: いくらイラン南部でも1月に寝袋なしで野宿しない

 

 

 

 

おわり

 

イランは1カ月ビザだったので1カ月にまとめたが、日数が全然足りない。イスハファーンさえ行ってないし。本当に見終えるなら全部で2.5カ月くらいは必要だと思う。

 

乗り鉄の次はやっぱ撮り鉄だぜ。

イラン鉄道撮影 2020

 

 

おわり。 Пока~~

 

 

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