世界のリフトから No.0001
イントロダクション
どうも。山本です。
エレベーターと言えば鉄製、自動ドアが当たり前、手動ドアのエレベーターを日本で見ることはほぼゼロになりました。
どこにでもあるこんなエレベーターは何気ない物です。自分と重いキャリーケースを運んでくれればエレベーターなんてはっきり言ってどうでもいい存在です。目的地への通過点に過ぎず、通過点を重要視する人は居ません。エレベーターもそんな人々の無期待に十分応えられるような無個性な容姿です。
しかし世の中には何事にも例外がある。
最高にユニークで、異彩を放ち、老いてもなお美を極めるエレベーターが
バルセロナに。
木造手動ドアエレベーター
木造エレベータがあるのはスペインのバルセロナ。フットボールや、サグラダファミリアで有名な都市です。
ちなみに私は某国人の前で「サッカー」と言ったら「フットボール」と速攻で訂正されてからこのことずっとフットボールを使うよう心がけています。
彼らは皮の肉の押し売りはごめんです。
何の変哲もないヨーロッパのビル。
モダニズム様式で外から見るとそれほど古そうに見えません。宿をここに取っているのでロビーに入ってみます。
なんだこの無茶苦茶しゃれおつなロビーは。
!?
なんだこの輝く木の箱は。
これはエレベーターだ。
昇降機だ。
少し古いだけの。
……….
とんでもないエレベーターです。
フロア側のドアは金属の網で出来ています。扉はもちろん手動です。
金属製の扉を手前に開けると、内側の箱のドアが見えます。
箱側のドアは木製です。
光沢を放っています。
内側は左右に開くタイプの引き戸です。
キャラメルが渋い。
….
乗車します。
箱は小さく、頑張れば4人乗れるくらい。
ムキムキの外国人なら2人でいっぱいになると思います。
目的のフロアのボタンを押します。
機械音を響かせながらゆっくりとしたスピードで動き出します。
かなり遅いです。
老齢のエレベータに「慌てるなよ」と諫められているような、そんな気さえします。
…..
普段利用しているような無味乾燥な箱、小奇麗で無個性な高速エレベーターや駅のピーチクパーチクしゃべるおせっかいな奴とは格が違います。
階級が違います。
只のエレベーターは忙しいサラリーマン。生きるためのタスクをこなすために必死になり身の回りにある風流を忘れてしまい、機能主義的にただ淡々と上下する箱とするならば、こちらは上流階級。伝統を重んじ格調高さを失わずユーモアの心を忘れない紳士です。
そこら辺の無味乾燥な普通のエレベーターがチンタラしてるとイライラしてしまいますが、エレベーターの美の極致を極めた彼がゆっくりと飛翔するひとときは、
至福です。
英国庭園の片隅にあるテーブルで紅茶を片手にするひとときのように、時の流れが変わってしまいます。スペインだけど。英国庭園に座ったこともないけど。
これほど贅沢なエレベーターが未だかつてあっただろうか。
かつての方があったんだけれども
美しい木目の天井はこれまで、幾人の住人や旅行者を見守って来たのでしょうか。
階段に囲まれた中心にエレベーターは鎮座しています。
まるで銀河の中心のように。
ガウディもすごかったですがガウディは物凄い建築だと前知識があった分衝撃が少なかったですが、
街中の普通のビルディング内にあるこのエレベーター全く不意打ちでかえってスペインで最も印象に残りました。やっぱガウディの方が凄いけど。
どこにあるの?
場所は、スペイン、バルセロナの中心に近いアパートメントです。
このアパート内に「ヒップ・カルマ・ホステル」という宿があり、そこに予約をすればアパートに入れます。
欧米のビルやアパートはたとえ旧式の建物であっても正面のドアはロックされ、インターホンで目的の部屋を呼ばないと解除できないことが多いです。変な人間が入ってこないようにですね。このアパートもロックはあります。
booking comで予約すると良いでしょう。
ただしこの「Hip Carma Hostel」は自分が行ったときは普通の安めのホステルだったのに、今は異常に値上がりしてます。最低46€です。謎です。
………..
手動開きのエレベータはヨーロッパには結構残っているので、
わざわざ乗りに行く必要は全くないと思いますが、見かけたら楽しんでみてください。
キャラメル色の木製エレベータが現役で動いているのはSSRです。見つけたら私に教えてください。
了