※この記事はクソです
虚無の中の猿。誰にも知られない猿
島尾の猿を知っているだろうか?
ほとんど誰にも知られていないだろう。
それは小さな動物園として存在している。
それは7年前に初めて出会った。
場所は富山県氷見市、氷見線の島尾駅の近くである。
時は2013年5月
氷見線を散歩していた
2013年のときの島尾駅。
ミント味のアイスクリームみたいな外壁に地域の子供たちが書いたファンシーな絵がある。水生生物をモチーフにしているらしい。そこを防水性の高い車両が走行し、少年は握りこぶしを天に突き上げている。
島尾駅を降り、特にやることが無かったのでとりあえず日本海を見ようと海へ向かった。
200mほど歩く。海に到達する前に松の木が大量に生えた公園があった。
島尾海浜公園。小雨の中閑散とした公園である。写真は公園の中央部あたりで停止した噴水と猿の檻がある。
動物園といっても金をとる動物園ではない。完全無料だ。
海浜公園の中央あたりにサルの檻が3か所ある。写真には2つ目立つ檻が見えるが、右奥の木の陰にもう3つ目の檻がある。
小雨の物寂しい中、猿たちは死ぬまでの空虚な時間を狭い監獄の中、虚無の中で暮らしていた。猿は全てを諦めきった顔をしている。
上野動物園のように大勢の人民にちやほやされるわけではない。ここは人口減少地域-富山県である。
訪れるオーディエンスは少ない。動物園というより公園の中央になんとなく設置された猿の檻を見に来たくてウズウズしてる人なんてもんはどれだけの数いるのだろうか。1日の見学者数はいかほどのものなのか。
展示動物は猿のみ。60秒眺めたらもう飽きてしまうレベル。何しろコンテンツが少なすぎる。魅力的な動物園とは言えない。むしろ地球上で最も魅力のない動物園かもしれない。リピーターがいると到底思えない。
言葉では言い表しきれない、精神にこたえる空虚さだった。この猿は一体なんだったんだろうか。
ぶっちゃけ言うと只の薄汚い猿がそう多くない数、監獄に閉じ込められているだけだ。(失礼すぎ)
そこには確かに猿がいた。見る人が居なくとも与えられた餌を食み、日が暮れて翌朝も同じ無限の輪廻。
当時十X歳だった僕はなんて生命というのが虚しいものかと思った。
ひょっとしたら人間もこの猿と同じ無限の空虚の輪廻の中かもしれない。学校、職場を往復し、似たような餌を食べ、与えられた娯楽を享受し、蒙昧無知の中、狭い知識でそうとも知らず全能と思い込む。耐久性が終わりを迎え死ぬ。
否、虚無は”ひょっとしたら”ではない。確定的である。
遂に再訪 島尾のしょぼすぎる動物園
僕に虚無という現実、陰鬱な現実を直視する勇気を与えてくれた島尾の猿。7年の歳月を経て邂逅の時が来た。
ひょっとしたら全て撤去されているかもしれない。消滅してしまったとしても僕はちっとも悲しくない。空虚から奪えるものなど存在しない。元から何もないのだから。
帰ってきた島尾駅。2020年現在シンプルなクリーム色だ。
2013年の駅舎は駅名板が巨大だったが現在は控えめな駅名看板になっている。
子供たちが書いたファンシーな絵も塗りつぶされて消滅してしまった。7年の歳月がたち替わってしまった。7年の月日が買えたのは駅だけではない。僕も変わった。前回は公共交通機関を利用するエコな青年だったが今回は免許を取得し車で来た。
というか7年って小学生なら卒業している。そんなに僕は高齢者になったのかと改めてショックである。
動物園
皮肉だろうか。7年前と同じ小雨。猿の檻はそこに存在した。
猿はまだ居るのか…?
この利用者が殆ど居ないと思われる動物園に。
財政緊縮策の中氷見市は匙を投げ、虚無の猿は虚無そのものになってしまったのではないか?
居た。
感動の再開である。
病原菌(KRN)のせいで国境を越えられない現在の我々。7年前よりこの猿たちをより親密に感じる。
猿は狭すぎる檻の中から教えてくれる。彼らは身を挺して教えてくれる。
人間の無力さ。人生の無意味さ。
お前たちも俺らと同じなんだぜ…? 五十歩百歩だろなあ人間?
絶望しろ人間共。
諦めて食えよ。餌を。
飲めよアルコールを。(サルはアルコール飲んでません)
196カ国行けるパスポートをかつて我々は持っていた。しかし今は無国籍&無戸籍のサルと同等である。
てか病原菌国境封鎖が解除されても究極的には地球という狭い檻から、アポロとイーロンマスク以外は出られないんだし、猿も人間もかわらんな(アポロとイーロンマスク以外は(二度目))。
と、大量の写真を撮っていると。
サルパンチ
スマホをかなり近づけて撮ってたら手を引っかかれうってかわって敵意むき出しの表情になった。こわっ。サル全然虚無じゃなかった。自由を奪われてなお闘争心を喪わない怒りの猿でした。こわっ。
血は出なかったけど確かにサルパンチマジで当たったぞ。
「KO-ROすぞ下等生物」
僕は猿がそう言っているように聞こえた。(だから言ってねぇよ)
さよならサル
島尾ハマナス荘
島尾海浜公園にはかつて宿泊施設があった。昭和感のあるハマナス荘という名前である。
7年前には気付かなかったが「島尾ハマナス荘」という閉店済みの宿泊施設が島尾海浜公園内に存在している。
電話帳をくり予約し家族でこぞって氷見線に乗り島尾駅で降りて海水浴に来ていた頃が想像できる。
ネットが無かった数昔前はさぞ賑わったことだろう。
今ここに宿泊する者はいない。
くたびれた看板、どことなく昔みがある看板。哀愁はある。
ひょっとしたらこの宿が全盛期で、島尾の海水浴が賑わっていた頃からサルは居たのかもしれない。(細かいことは知りません)
海水浴をするにしても、汚いとは言えないが、感動できるほどの綺麗な砂浜とは言えない。
突出したものがない島尾海浜。
さらば島尾海岸。
いつまで生き残るかサル園。
島尾海浜公園は基本的に空虚さを味わえる富山一のスポットです!絶対おすすめ!嘘だけど!島尾海浜公園最高!いやわかんねぇ。蒙昧無知の空虚な檻の中に居る下等生物たるワイには何一つ分かることは無い。
おわり(おわり)