カズベキ 天空の教会に冬の悪天候で行ったらどうなるか

 

天空の教会。空に一番近い教会。

 

セルゲイソ連スキーです。天空の教会に行ってみました。

 

カズベキ。ジョージア。ネット上で溢れた単語です。空に一番近い!絶景!素晴らしい眺めをトレッキング。デリカタクシーで行く。日帰りで行く! 

 

だから皆行きます。仕事に疲れた元医者。休学して世界1周する学生。ノマド志望のいい歳の人。

 

 

Gergeti Trinity Church, Stepantsminda – TripAdvisor

こちらリンクの写真をご覧ください。確かに美しい。トリップアドバイザーでは★5。どこかで切っていると思うけど驚異的な数字です。仕事に疲れた元医者や休学して世界1周する学生やノマド志望のいい歳の人が行きたくなるのも頷けるでしょう。googlemapの評価も高く★4.8。

しかしどうでしょう。皆、素晴らしい景色。絶景というのに踊らされていませんか。綺麗なものは完全に綺麗なんですか。美人は化粧を取ったらただのぽっちゃり扁平顔かもしれません。新幹線の圧力式トイレはとてもきれいですがうんこを誰かが車両基地で吸い上げています。世界的有名観光地サントリーニ島は白い城壁で有名です。しかし毎年冬客が少ない時期には作業員が白壁を毎年塗っているから冬に行ったら工事現場です。海外有名俳優は舞台ではあんなにかっこいいのに私生活では泥沼の離婚闘争。ドラマの俳優はあんなに良い演技でもカナダでドラッグのやりすぎてホテルの一室で倒れて死にました。

 

どんなものにも常に美しいとは限らない。

 

我々がすべきこと。それは美しくない時も愛せ。

 

天空の教会

 

この世界的観光地であるカズベキの天空の城は正式名称はGergeti Trinity Church。

標高2170mにある教会で14世紀に建てられました。山々に囲まれた教会はジョージアのシンボルになっています。18世紀の作家Vakhushti of Kartliは危険があった時ムツヘタ(トビリシ近郊の町、教会)からSaint Nino’s Cross を含む重要なものを運び込んだと記しています。2018年に車道が整備された。

 

Gergeti Trinity Church -wikipedia

 

 

時間、料金

 

9時から17時、0ラリ

金をとってもよさそうな世界的有名観光地なのに無料。ジョージアは親切ですね。9時から17時以外でも外から見るだけならいつでも見れると思います。一応教会の扉が開いている時間という事でしょう。

 

 

天気が悪い時に歩いて行ってみた

 

タクシーで行くという方法もありましたがステパンツミンダで2泊していたのでどうして慌てる必要があるでしょう。googleマップ上でも大して遠くないから歩けます。というかジョージアくんだりまで来てトビリシから日帰りで行くのは悲しくないか。ともかく歩くことにしました。

麓の広場では観光客と見るやデリカのタクシーが声をかけてきます。私はジャップなのでノーセンキューではなくソーリーと言って断ります。

 

Tips:ジャップはタクシーを断る時ソーリーで断る

 

 

道を研究する

 

出発前に道を紹介します。google mapは優秀ですが登山道までは網羅していません。適当に地図を作りました。

 

徒歩で突破するルートは2つあります。1つは赤色のルートで比較的分かり易い道です。もう一つは青色のルートでかなりの急傾斜なうえに途中車道から登山道への入り口が分かりにくいです。

往路は前者をおすすめします。比較的勾配が楽だからです後者は帰りに使うのをお勧めします。前者はGoogle mapには表示されない楽なルート。yandex mapだと出るのでインストールすると良いかもしれません。

 

 

ルート1:楽で景色の良い道

スタート地点のバス停のある広場から開始。

 

氷点下の中スタートしようとするとまず私の足に避妊をしなかったメス犬から生まれた4匹の子犬たちが寄り縋ってきました。おそらく餌を求めていたのでしょう。しかし私は野生動物を冷酷に見捨てるのは比較的得意なので適当に振り払って歩いていきます。

ロシアからトビリシをつなぐ主要幹線道路を横断します。交通量はそこそこの数来ます。私が横断した後4匹中2匹の子犬は私についてこようとして疾走するランドクルーザーにひき殺されそうになりましたがランドクルーザーの運転士は親切でクラクションを鳴らしつつ回避しました。ここで死なれたら後味が悪いのでランドクルーザーありがとう。

 

主要道路にかかる橋を渡ります。ここで左手にかっこいい廃橋のようなものが左手に見えます。川を渡ってすぐ左に折れると住宅街です。

赤色の道、上りやすい方の道で登っていきます。途中までは住宅街を歩き途中から徒歩専用の山道を登っていきます。

 

動物

 

住宅街では豚や牛や犬が我々を出迎えてくれるでしょう。人間とすれ違う数と動物とすれ違う個体数がどっこいどっこい。あるいは動物の方が多いかもしれません。

2匹の豚は異様に仲が良さそう。ひょっとしたら元々人間でジブリに豚にされてしまったのかもしれませんね。

 

牛はカメラ目線でパリコレモデル風で歩いてきます。角が案外とがっていてこいつにけんかを売ったらここで死ぬなと思います。

 

 

おいしい天然水①

 

道中には水道があります。今日が夏場だったらカフカスの天然水を飲んで優勝したい所でしたが、寒すぎて飲む気に慣れませんでした。やはり観光シーズンの夏に来るのが最も良い方法ですね。飲んでないから言い切るのもおかしいですがイかした古代風の石積みの設備から出てくる水はうまいんじゃないかと思います。

 

登山

 

いよいよ山道に突入。登山道に入るとすぐ急な勾配かつ雪が凍結した危険個所がありいきなり試練です。滑ってコケそうになります。旅行中にそんなヘマはしたくありません。僕はこんなところで旅行保険を使いたくありません。

写真を撮っている場合ではないのでカメラを必死にかばいつつ登っていきます。

 

急な勾配を超えると上の写真のように延々と山を這って続いていくような道が眼前に開けます。雄大でファンタジーっぽい世界です。しかし寒いです。

 

何らかの廃墟のようなものが見えてきました。小さな砦の廃墟でしょうか。かっこいいですね。

 

道中もただひたすら天気が悪くて寒いだけで氷点下の悪条件。こんな日に上ろうという人は滅多におらず登山道は静寂。住宅街で1組のカップルが私を抜かしていった後、私を追い越すものもすれ違う者も居ませんでした。さらに標高が上がるにつれて雪が降り始めました。雪が音を消していき静寂の中。せっかくの他人の居ない世界なのでうずくまってこの大渓谷を堪能することにしました。

 

うずくまって上を見上げると本来ならそろそろ教会が見えているはずだと地図は言っていますが全く見えません。やはり僕みたいな陰キャは下を見ろと神は言っています。陰キャはうつむいて猫背で生きていくのがお似合いだとの思し召しなので下を見ることにします。

 

これが下。

滑り落ちたら多分昇天できるような渓谷。誰も通らぬ登山道でフードすら無い脆弱な防寒対策の服でうずくまり崖下を凝視するのは風情があります。

急に思い出したんですが「岳」って読んだことありますか。主人公の三歩は山岳救助隊員で、遭難したヘボい登山客、たといどんなにアホで自業自得な登山客に対しても助けて、よくがんばったな といういって助ける山岳救助漫画です。遭難したヘボいモブキャラはだいたいこんな気分でうずくまってるんだろうなと雑草についた氷を眺めながら思います。しかし主人公はやってこないので(ねたばれじゃん)歩き出すことにします。

 

 

Tips:冬は静寂

 

 

世界的有名教会に到着

12時11分に到着。登り始めは10時45分のタイムスタンプだったので1時間30分程度で到着です。

僕を追い越していったカップルは既に見学を終えてやあと言ってきました。私の後にはタクシーでやってきた中国人が10人くらいやってきました。流石世界的有名観光地なだけあります。

 

 

言うほど美しくない天空の城

 

天気が良いからこそ天空っぽく見えるのです。私は天気が芳しくない時行ったから断言できます。以下の写真をご覧くださいどこが天空なのでしょうか。

 

    

天気が悪い時のGergeti Trinity Churchがこちら。標高2000メートルを超すため低く覆う雲に城自体が入ってしまいます。雲の内側からは周りの景色はほぼ見えません。100m先が見えるくらいかな。よって背後にあるはずの美しいコーカサス山脈はその存在すら確認できません。実は先日大噴火が起きて実はもう山脈が無くなっていたかもしれないという悪魔の証明的な事を言われたらええ確かにこの時山脈はあったとは私は断言できません。シュレディンガー。

 

 

教会に入ります。

 

天空教会には2つの建物があります。ひとつは門です。門の中にはベンチが2つあって休むことができます。薄暗い門の建物の中には使ってるのか使ってないのか分からない燭台が放置してあり、壁には特殊な意匠を凝らした模様が描いてあります。屋根はあるので雪はよけられますが暖房はないので寒いです。

もうひとつは教会の本体です。門を出て左に行くと入り口があります。これが教会の扉。

一見閉鎖されたような重厚なつくりの教会の扉。押すと開きます。開けると邪悪なものが解放されてしまいそうな雰囲気はありますが、特に邪悪なものは出て来ませんでした。中は薄暗い教会。2名が中に居て一人は神父のような黒い装束の人が蝋燭や神聖なグッズを売る場所に佇んでいて、もう一人はなぜか入って左手で蹲って床に座っている人で微妙に怖い。

沢山の蝋燭がともっているから室内は少し温かみがあり、手の感覚が戻りました。外気はマイナス3か5度くらいだったと思います。

 

 

ルート2:下山

 

 

私は同じルートで帰るのはあまり好きではありません。青色のルート2を試しに行ってみました。世界的有名観光地で道路を研究するというヲタクの楽しみ方もひとつ面白いかもしれませんね。

 

ルート2は自動車用の道路に近いルートですがそれをショートカットする方法でのルートです。

 

動物

 

教会を出るとまず犬が出て来ました。メス犬です。そしてどこからか子犬の声がします。気になったので声の方向に行ってみると段ボールハウスの中に子犬が何匹か居ました。

 

本日2回目の子犬です。薄暗い段ボールハウスを覗き込むと、最初に出あった子犬よりもより産まれてから間もない子犬たちが目視で3引くくらいいました。これを可愛い子犬というべきか、産まれてしまったという不幸から寒さの苦痛を味わい悲惨な鳴き声を上げていると捉えるかは個々人の自由なので私は明言しません。

 

危険性

 

googlemap上で車道が大きく迂回するのを一気にショートカットする登山道。当然迂回分の標高差を一気に下るので急勾配。冬に歩いて良い道ではありません。普通にコケました。特に1眼レフを持っている人にとっては命より大事なカメラをかばいながらコケると余計変な転び方をして危険です。

私は登山靴で来ているので足がズブっと雪に刺さったときなんとか持ちこたえましたがスニーカー出来たら指先が凍傷とまではいかなくてもしもやけになるのではないかと思います。しかし来てしまった道を引き返すわけにはいかないので登山靴に感謝しつつ、たまにコケてふぁーーっくと山の中で叫びながら降りていきます。ふあつくの汚い罵り言葉も雪がかき消してくれます。

 

 

ジグザグの登山道から大回りしてる道路に出る時にはもう一つの試練が待ち受けています。地図上の線ではあたかも普通に道路へ降りられそうに見えて油断したのですが、コンクリート製の法面が設置されており、そこを降りるのは容易ではありません。なんとか気合で道路に降りました。しかしここを逆方向に、つまり登ろうと思ったらただの法面を登山道入口として認識するのは困難でしょう。

同じタイミングで下から歩いてきた中国人若い男性のグループは、私が降りてきたのを見てショートカットできるのかなみたいな視線を投げかけて来ましたが、道を理解できず諦めて遠回りの自動車道を歩いていきました。仮にあの時彼らに聞かれても私はお勧めはしなかったでしょう。凍結し転倒の恐れがある登山道を人に勧めるほど私は人間性は腐っていません。僕はいい人間だな。凍結した登山道を他人に勧めるか否かで人間のやさしさがわかる。

 

法面をなんとか降下し、道路のイロハ坂みたいな部分までやってきました。脳内でユーロビートが流れ始めます。スノーコンディション絶対運転したくないけどね。ここは最近舗装されたらしく、つづら折れの自動車道路をショートカットできる徒歩道には侵入しづらくなっていました。おとなしく車道を歩いた方が良いと思います。

 

パノラマしました。つづら折りが美しい。

 

 

つづら折りが終わると、道路は東の方に抜けていきます。徒歩で遠回りはしたくないのでショートカットルートを歩くことにしました。しかしショートカットルートの一部は個人の敷地らしく柵で囲われており柵をつたって少し迂回する必要があります。迂回すれば通過できます。

 

 

迂回先するとそこは墓地でした。ジョージア人の墓地。ロシアでもそうだったんですが墓石に本人の顔のプリントがされている墓ってこっちでは普通なんですかね。ちょっと怖みがありますね。墓地の写真は無いです。

 

 

墓地から街へ下るとルート1と合流し、そのままステパンツミンダ , カズベキの中心地、バス乗り場があるところへ降りていきます。

 

 

主要道に出る直前、左手に森があります。その森にあった謎の物体。モニュメントというべきか僕は何を表しているか知りません。何か悲壮感じみたものをを感じます。とりあえずこれは死のかかしと命名します。

 

2回程度転びかけましたが、何とか下山できました。

 

 

所要時間

 

1時間15分、上り徒歩の時間

これは相当体力のない私のかかった時間。登山道の途中でボーッとした時間も含まれるのでこれ以上かからない最大時間だと思います。身軽でムキムキな人ならもっと早く歩けると思います。どれくらい私に体力が無いかを説明するに簡単に説明すると富士山の須走口は6時間のコースタイムが10時間かかりました。

 

 

下り徒歩の時間:

12時47分に降り始め、14時6分に降り終わりました。実際には途中で道に迷っているので1時間くらいあれば降りられると思います。

 

 

終わりに

見たもの:

  1. 子犬
  2. 子犬
  3. 砦の廃墟
  4. 豚・牛
  5. カフカスの美味しい天然水
  6. 墓地

 

 

素直に天気が良い時に行った方が良いに決まっとるわい。

 

 

カズベキには天気が良い時に行きましょう。世界的有名観光地が単なる霧になります。路面凍結によりコケて海外旅行保険の世話になってしまうかもしれません。

 

 

我々がすべきこと。それは美しくない時も愛せ

 

 

最初にそう記しました。いや無理だ。人間はそんな綺麗毎ばっか言いやがって。結局はベストコンディションで行った方が良いという事はわかりました。これを読んでしまったあなたは仮にステパンツミンダに行った時、冬でかつ天気が悪かったら、いや、天気が悪い時に世界的有名観光地を愛せるかどうかが人間の器にかかっているか。

 

 

いや。

 

わかんねえ。

 

 

 

 

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